2023 Fiscal Year Research-status Report
がん患者への臨床薬理学的アプローチによる経口第Xa因子阻害薬新規個別化療法の開発
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22K15332
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
中川 潤一 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (50880001)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 経口第Xa因子阻害薬 / 炎症性サイトカイン / 核内受容体 / 静脈血栓塞栓症 / がん / 薬物トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題に関する症例集積を進めていく中で、手術後の膵がん患者において、高度な炎症反応(IL-6及びC反応性蛋白質高値)、薬物相互作用(DDI)及び急性腎障害の並存下にエドキサバン及び活性代謝物M-4の血中濃度が高値となった患者を経験した。 本患者では、OATP1B1およびP-gpの活性が低下し、エドキサバンの腸管吸収増大、活性代謝物M-4の産生促進及びM-4の排泄遅延が生じたものと考えられた。特にM-4の血中濃度上昇は顕著であり、サンプル採取日におけるエドキサバンに対するM-4濃度比(M-4 ratio)は88.3%、110%及び186%であった。健常人におけるM-4 ratioは10%程度であり、腎機能障害患者においてもM-4 ratioの上昇は軽微であることが報告されている。一方で本症例のM-4 ratioは急性腎障害では説明できないほどに高値であり、他の要因がM-4 ratioに影響を及ぼした可能性が考えられた。サンプルの採取期間におけるIL-6 (pg/mL)濃度は20.1 ~76.0 ng/mL、CRPは5.05~14.7 mg/dLと高値であり、更にはOATP1B1活性の外因性マーカーであるコプロポルフィリン-Ⅰ(CP-Ⅰ)も4.6~6.0 ng/mLと高値であった。これらの結果より、急性炎症反応がOATP1B1活性の低下を引き起こした可能性が考えられた。本症例の詳細については今後、症例報告を行う予定である。 また、CRP、IL-6、IL-1β及びTNF-αの血中濃度とエドキサバン、アピキサバン、リバーロキサバンの薬物動態との関連性については解析に十分な症例数を確保できていないため、今後も引き続き症例集積を行い、更なる検討を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画案当初に見込んだ症例数の確保に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、主として血液がんの患者を研究対象者としていたが、症例集積の進捗が計画より遅いため、対象となるがん種を肺がんにも広げる予定である。また、研究期間の1年延長も視野に入れながら、研究を継続していく。
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Causes of Carryover |
本課題の遂行に遅れが生じているため、消耗品の購入が研究立案当初の予定より僅かに少なかった。来年度は、UPLC-MSMS用消耗品、各種炎症性サイトカイン測定用ELISAキット及び薬物応答性遺伝子多型解析用試薬の購入費用として、使用する予定である。
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