2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K15351
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
柳下 薫寛 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (80781674)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 免疫グロブリン / 糖鎖修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖鎖は核酸、蛋白、脂質に次ぐ生体内の第四の生命鎖である。生体内の免疫グロブリン(IgG)は小胞体、ゴルジ体で36パターンもの糖鎖修飾を受けうる。IgGの糖鎖構造は年齢、性別、担がん状態、炎症などにより影響を受け、またIgG型抗体医薬では糖鎖変化により治療効果が変化することが知られている。しかし糖鎖解析はコストや煩雑さ、データベース化が未整備であるため、糖鎖構造と生理活性や臨床的意義の関連性は不明である。申請者はこれまでに血中IgGの糖鎖修飾に個人差が大きいこと、抗体製剤が生体内で二次的に糖鎖修飾を受けること、そして抗体製剤の二次糖鎖修飾が個々人のIgG糖鎖修飾パターンと相関することを見出した。さらに糖鎖修飾パターンが抗体製剤の血中濃度へ影響を与える可能性を見出している。しかし個々人における糖鎖修飾パターン変化をもたらす要因は未だ不明であり、この因子を同定することで抗体製剤の体内動態並びに治療効果を予測できる可能性がある。本研究ではがん患者の血中の免疫グロブリンの糖鎖修飾に注目し、抗体医薬の糖鎖修飾による薬効薬理、生命現象への影響を検討することを目的とした。令和4年度は東ソー株式会社の開発したTSKgel FcR-IIIA-NPRを用い、患者血清の免疫グロブリン糖鎖解析を実施した。リンパ腫、胃がん、大腸がん、肺がんなど複数のがん種における患者血清を解析し、糖鎖パターンが個々人で大きく異なること、また東北メガバンクから取得した健常者血清と比較して担がん患者で糖鎖パターンが大きく異なることを確認した。現在確症例における糖鎖パターンと薬物治療効果や生命現象との相関解析を実施している。また、糖鎖修飾パターンの違いのメカニズム解明としてGWAS解析を実施している。約1700例の糖鎖パターンとGWASの相関解析より、特定での一遺伝子多型が糖鎖パターンに影響を与えている可能性を見出し、検証を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検体の解析並びに生命現象との相関解析、メカニズム解明を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度よりがん種や症例ごとの糖鎖パターンと患者背景情報との関連を解析する。またGWAS解析により得られた結果をもとに、糖鎖修飾の個人差を生み出すメカニズム解明と、そこからもたらされる生命現象を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
令和4年度で購入予定であった消耗品が予定よりも少量で済んだため、一部助成金を次年度に回し次年度の研究を促進することとなった。
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