2022 Fiscal Year Research-status Report
炎症性メディエーターに着目したピロリ菌による炎症性発癌機構の解明
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22K15356
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
久保 修一 大分大学, 医学部, 助教 (60898097)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ピロリ菌 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
① CagA遺伝子発現による細胞外S1Pの増加を確認した 我々はこれまでレンチウイルス感染系により、CagA遺伝子を発現した胃粘膜上皮細胞株AGSでは、細胞内スフィンゴシン-1-リン酸(以下S1Pと略す)が増加することを明らかにしてきた。さらに細胞外へ放出されるS1P量がCagA遺伝子発現に伴い増加するかを解析するため、レンチウイルスを感染させたAGS胃細胞株の培養上清中のS1P量を液体クロマトグラフィー質量分析法により測定し、培養上清においてもS1Pが顕著に増加していることを確認した。 ② CagA遺伝子を欠失させた変異型ピロリ菌株の作成 細胞内外S1P量の増加が、CagA陽性のピロリ菌感染によっても認められるかを確認する目的で、CagA陽性の野生型ピロリ菌からCagA遺伝子のみを欠失させた変異型株を樹立した。これらの株をAGS胃細胞株へ感染させ、抗CagA抗体を用いたWestern blottingによりCagA遺伝子の欠失を確認した後、細胞内外のS1P量を測定した。細胞内S1P量には両者間でほとんど差が認められなかったが、野生型ピロリ菌を感染させた培養上清では、CagA欠失変異型ピロリ菌と比較して有意なS1P量の増加が認められた。 ③ CagA遺伝子発現細胞の培養上清によって、免疫担当細胞の遊走が強く誘導された。 レンチウイルス感染系、およびピロリ菌感染系を用いてAGS胃細胞株へCagAを発現させ、得られた培養上清の免疫担当細胞(単球由来細胞THP-1)の遊走誘導活性をBoyden Chamber assayにより測定した。いずれの感染系においても、CagAを発現したAGS胃細胞株の培養上清では、発現していない細胞の培養上清と比較して遊走したTHP-1数に有意な増加が認められた。この知見をさらに強固にするため、現在S1Pの阻害剤を併用した確認実験を継続して進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はこれまで、CagA遺伝子発現(レンチウイルス感染系およびピロリ菌感染系)により、細胞内のS1Pが増加することを明らかにしてきたが、培養上清(細胞外)においても、CagA遺伝子を発現していない細胞の培養上清と比較してS1P量の増加が認められ、さらに炎症に関与する免疫担当細胞の遊走が、強く誘導されることを確認した。これは、当初の実験計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
レンチウイルス感染系に加え、新たに樹立したピロリ菌感染系によりCagA遺伝子を強制発現させ、S1Pの産生、代謝に関連する遺伝子群の変化を解析する。また、野生型ピロリ菌およびCagA欠失変異型ピロリ菌をスナネズミへ感染させ、胃組織中のS1Pの増加を液体クロマトグラフィー質量分析法により測定する。さらに、これらのピロリ菌に感染した胃の凍結組織切片を作成し、HE染色・抗体免疫染色を用いた炎症の評価や各種遺伝子群の変化を解析していく。
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