2022 Fiscal Year Research-status Report
ORP6による非小胞性脂質輸送の分子機構および生体機能の解明
Project/Area Number |
22K15360
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
望月 信弥 自治医科大学, 医学部, 助教 (60844032)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 細胞内非小胞輸送 / ER contact site / PI4P / 神経細胞 / 細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ORP6による非小胞性脂質輸送の分子機構とその生体機能を解明することである。細胞内の膜小器官接触部位ではコレステロールやphosphatidylinositol 4-phosphate (PI4P), phosphatidylserine (PS)などの脂質がタンパク質や小胞によって輸送される。タンパク質での輸送は輸送速度が速く、異なる脂質を独立して輸送することが可能であるが、その輸送を担う分子機序は不明である。申請者は、Oxysterol binding protein-related protein (ORP) 6が小脳や脊髄に多く発現し、神経細胞内の小胞体と細胞膜との間でPI4PやPSの輸送に働くこと、培養神経細胞の生存に寄与することを発見した。しかしながら、ORP6の生体機能は不明である。 これまでに、培養細胞の分化誘導後にORP6mRNAやタンパクの発現量が増加することが報告されている。申請者は、小脳顆粒細胞の分化や移動の時期にORP6タンパクの発現量が増加することを見出したが、ORP6が小脳発達に及ぼす影響は不明である。そこで申請者は、培養神経細胞およびIn utero electroporation法による遺伝子改変動物を用いて小脳発達におけるORP6の機能を解析中である。 申請者は、Neuro2A細胞の分化時にORP6タンパクの発現量が増加することを見出した。さらに、ORP6発現抑制下およびORP6ドミナントネガティブ変異体や脂質結合ドメインを欠失したORP6変異体の発現下では、細胞分化後の突起伸長に変化がみられた。初代培養小脳顆粒細胞においては、ORP6発現抑制下において成熟神経細胞の割合が変化し、ORP6が小脳顆粒細胞の分化に関与する可能性を見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ORP6による非小胞性脂質輸送の分子機構とその生体機能を解明することである。申請者は、Neuro2A細胞の分化時および、小脳顆粒細胞の分化と移動の時期にORP6の発現量が増加することを発見した。さらに、新機種Operettaを用いた定量解析により、ORP6発現抑制下およびORP6ドミナントネガティブ変異体や脂質結合ドメインを欠失したORP6変異体の過剰発現下においてNeuro2A細胞の突起伸長が変化することを発見した。加えて、初代培養小脳顆粒細胞においては、ORP6発現抑制下において成熟神経細胞の割合に変化がみられ、ORP6が小脳顆粒細胞の分化に関与する可能性を見出した。In utero electroporation法によるIn vivo解析も進行中であり、ORP6の生体機能の解析に進展がみられたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)ORP6が輸送する脂質を同定するために、脂質プローブを用いた細胞内イメージングおよびLiquid Chromatography Mass Spectrometry (LC-MS)を行う。 2)ORP6発現抑制下の培養神経細胞を用いて、transwell migration assayによる移動能の解析を行う。 3)ORP6発現抑制下の初代培養小脳顆粒細胞を用いてマイクロアレイを行い、分化や移動における分子メカニズムを調べる。 4)ORP6の輸送脂質と分化・移動との関連を明らかにするために、輸送脂質合成阻害剤存在下における初代培養小脳顆粒細胞の突起の長さ、成熟神経細胞の割合、transwell migration assayによる移動能を解析する。 5)ORP6欠損マウスやIn utero electroporation法を用いた遺伝子改変動物のin vivo解析および行動解析を行う。
|
Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症により試薬納入に遅れが生じたため。また、新機種Operettaを使用した実験系で大きな成果が得られ、今後も継続して使用するための財源として次年度使用額が生じたため。
|