2022 Fiscal Year Research-status Report
新規Na/K測定法・操作法の開発によるエンドソーム機能制御メカニズムの解明
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22K15362
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柏木 彩花 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (60880002)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Naイオン / Kイオン / エンドソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
Na+とK+は生体内における主要な陽イオンであり、形質膜を隔てたNa+とK+の濃度勾配は、グルコースやH+などの二次性能動輸送や神経活動などに重要な役割を果たしている。しかし、オルガネラレベルでのNa+とK+の機能に関する知見は乏しい。オルガネラの一つエンドソームは、細胞膜で括り取られた後、融合と分裂を経ながら形態や機能が変化する動的な構造である。内容物を分解する経路に至るエンドソームで小胞内のH+濃度が徐々に増加することはよく知られており、Na+やK+はH+輸送のための電気化学的勾配の形成、あるいはH+との交換輸送のために濃度が変化するのみと考えられていた。しかし近年、エンドソームとリソソームの機能に対するNa+とK+の直接的な関与が明らかになりつつある。本研究ではエンドソームのNa/K動態が細胞外物質の取り込み、エンドソームの輸送・融合・分裂や成熟にいつ・どのような寄与があるのかを解明する。 NaClを膜不透過性のカチオンで置換した培地を、蛍光タンパク質で標識した初期エンドソームマーカーを発現した細胞に添加し、エンドサイトーシスを惹起するために上皮成長因子(Epidermal growth factor, EGF)で刺激したところ、コントロールの細胞と比べてエンドソーム小胞が速やかに細胞内へと輸送され、微小管形成中心へと集まり、初期エンドソームマーカー陰性になる様子が見られ、エンドソームに取り込まれた細胞外液中のNaが減少したことでエンドソームの成熟が加速したことが示唆された。そこで、蛍光タンパク質で標識した後期エンドソームマーカーを発現した細胞に蛍光色素標識EGFを添加したところ、EGFはコントロールの細胞と比較して速やかに微小管形成中心へと輸送され、後期エンドソームマーカーと共局在した。Naを含まない培地を取り込んだエンドソームは速やかに成熟する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培地中Na濃度を低下させることでエンドソームの成熟と微小管形成中心への輸送が促進することが確認できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
培地中NaCl置換とは別のメソッド(イオンポンプ・チャネル阻害薬、イオノフォア等)でも同様の現象が見られるかどうかを確かめる。K置換培地においても同様に各種エンドソームマーカーや蛍光標識EGF等を用いた生細胞イメージングを行い、Kがエンドソームの細胞内輸送や成熟に与える影響を調べる。H+感受性色素を用いるか、蛍光タンパク質ベースのH+センサーおよびK+センサーをエンドソームマーカーに融合させたものを作製し、NaおよびK置換培地におけるエンドソーム内イオン濃度の経時的な測定を行う。微小管やアクチン線維、モータータンパク質等、エンドソームの輸送に関与する因子に対してもイメージングや生化学的手法で細胞外Na/Kの影響を確認し、輸送促進の背景にあるメカニズムを明らかにする。また複数の細胞種において、日単位でのNaおよびK置換培地での細胞生存、増殖能も確認し、より長期的な耐性において由来臓器ごとの違いがあるかどうかを確かめる。これまでにNa置換培地でEGF刺激を行うと、初期エンドソームの輸送が一方向に偏ることを示唆する画像が得られており、画像取得のインターバルを短縮して画像解析によるトラッキングを行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行が遷延し、当初予定していた学会参加のための旅費の支出がなくなったため。また樹脂や半導体不足のため、発注した製品のうち、いくつか年度内に納品が間に合わなかったものがある。これらは翌年度内に納品予定である。
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