2022 Fiscal Year Research-status Report
リンパ管による生体局所の物質・水循環調節機構の解析
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22K15366
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
諸岡 七美 浜松医科大学, 医学部, 助教 (40817110)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リンパ管 / 生体イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
微小循環におけるリンパ管の物質取り込み機構を明らかにすることを目的に、令和四年度は、生きた動物を用いたリンパ管および物質動態の観察手法の構築をおこなった。 まず、リンパ管特異的に蛍光蛋白質が発現するモデル動物(Vegfr3-Gap43-Venus BAC Tgマウス、Watanabe, 2019, PLoS One)を用いてリンパ管を可視化し、2光子励起顕微鏡による生体光イメージングを試みた。生体組織では傷害が生じると、血管透過性の亢進による組織圧の変動や免疫細胞の集積・過剰な活性化が起こり、正常なリンパ管機能を計測する事が困難となる。そのため、外科的手術が不要であり、非侵襲で観察が可能な耳介を観察部位として選択し、生きたままの動物でリンパ管を観察できることを確認した。 次に、リンパ管を介した物質循環動態の直接計測を実施するために、蛍光トレーサーのリンパ管への取り込みをライブイメージングにより観察した。具体的には、蛍光トレーサー(TRITC-dextran等)を尾静脈注射によって血管内に注入した後に、血管の一部を光刺激によって傷害し人工的に間質への漏出を誘導、直後から2光子顕微鏡を用いたタイムラプス観察をおこなった。その結果、間質に漏出したトレーサーがリンパ管内腔に取り込まれる様子を経時的に観察することに成功した。さらに、取得した画像からトレーサーの蛍光強度変化を時空間的に解析することで、取り込み部位やリンパ流の方向等の推定も試みた。 さらに、ライブイメージング終了後には免疫染色を実施し、生体観察をおこなった部位の細胞間接着構造や周皮細胞の有無を調べ、リンパ管の物質取り込み部位と構造的特徴との比較もおこなった。これらの生体イメージング及び免疫染色の結果を統合して理解することで、リンパ管の取り込み機構を明らかにできると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、間質部位へのトレーサーの導入方法として、血管傷害による方法を試みた。既存の2光子励起顕微鏡装置で実施できることに加え、生体において血管から漏出した血漿成分(組織液)がリンパ管に取り込まれる様子を模倣すると考えたためである。しかし、この方法では血管の種類(動静脈または毛細血管)や場所(特に観察方向からの深さ)によって傷害の度合いに差が生じることが分かった。このため、トレーサーの間質への漏出が起こらない、または、漏出量が多すぎてタイムラプス中に観察面がずれる、および、バックグラウンドが上昇して解析に適さないデータになる、などの問題が生じ、安定した結果が得られない状況となっている。また、血管傷害法では、血管の走行している場所でしかトレーサーの導入ができないため、導入部位とリンパ管との距離の調節や、場所の選択(リンパ管の先端からの導入か、側面からかなど)ができないことも問題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、間質へのトレーサーの導入方法として、非常に鋭利なガラスキャピラリーを用いて直接間質部局所へナノインジェクションする方法を試みる。ニ光子励起顕微鏡観察に適したインジェクション装置の作製、および最適化をおこない、リンパ管へのトレーサーの取り込みの観察を試みる。ナノインジェクション法を確立することで、トレーサーのインジェクション量や場所を任意に調節した実験ができるため、血管傷害法による問題点を解決できるとともに、取り込み量や取り込み場所の解析がより詳細に実現できると考える。また、間質だけでなくリンパ内腔へのインジェクションもおこなうことで、リンパ流の影響やリンパ管内外圧による取り込みの影響も調べる計画である。
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Causes of Carryover |
当該年度は既存の設備を用いてできる実験(血管傷害法による生体イメージング)を先に試みた。そのため、当初想定していたナノインジェクション法による生体イメージングに必要な物品は購入せず、次年度に持ち越すこととなった。
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Research Products
(1 results)