2022 Fiscal Year Research-status Report
甲状腺がん未分化転化に至る形態学的構造の分子病理学的in situ解析
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22K15407
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
ムサジャノワ ジャンナ 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (30770432)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 甲状腺がん / 未分化がん / 細胞接着 / 極性 / 上皮間葉転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
甲状腺乳頭がんのHobnail亜型は再発や遠隔転移の頻度が高く予後不良で、未分化転化と関係し原病死につながる。Hobnailパターンの形態学的特徴は、がん細胞の極性の乱れと細胞接着の異常(LOP/LCC)を反映し、転移・浸潤能の獲得につながる上皮―間葉転換(EMT)を示唆する。97例の原発性甲状腺がんを解析し、16例のBRAFV600EとTERT promoterのdouble mutantを検出し、その全てで浸潤部にLOP/LCCパターンを認め、14例がpT3 or 4、10例がpN1で、9例がKi-67標識率6% 以上であることが判明した。これらを対象とし、通常型乳頭がん成分では正常濾胞と比較してCK8/18とClaudin-1発現が亢進し、VimentinとZO-1発現の極性(Apical-basal polarity)は保持され、予後不良亜型である高細胞亜型にはβ-cateninの異所性発現(核上部胞体内発現)やClaudin-1とVimentin不均一発現が、Hobnail亜型成分にはVimentin, Claudin-1, ZO-1、β-cateninの発現低下が関与し、さらに低分化がんにはZO-1発現は保たれApical-basal polarityは維持されているが、CK8/18とVimentinの発現が消失することが判明した。これらの結果は、甲状腺がん進行に関連する組織構築の変化過程には細胞骨格と細胞間接着のダイナミックな変化が関与することを示唆していて、細胞接着性や中間フィラメントの調節異常が高分化がんの予後不良亜型や低分化がんの形態形成に重要と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、乳頭がん、濾胞がん、低分化がん、未分化がんの組織中に認める、乳頭状・濾胞状・LOP/LCC・低分化成分の充実/索状/島状(STI)・紡錘形パターンという甲状腺がんの形態学的基本構造を、細胞間接着と極性の観点から分子病理学的にin situで解析し、未分化転化や予後不良との関係を免疫組織化学的に形質分類する事が目的である。今年度に、CK8/18とβ-cateninの二重染色にて正常濾胞ではCK8/18がbasilar、β-cateninはlateralを主体に発現が、乳頭状パターンではCK8/18がapical、β-cateninはlateralを主体に発現が観られ、乳頭状パターンではCK8/18の発現極性が変化していることが判明した。一方、他の症例ではβ-cateninの発現が、細胞膜ではなく、核上部に点状に観察され、Golgi glycoprotein-1(GLG)とβ-cateninの二重染色で点状の異所性β-cateninはGolgi apparatusに局在しaggresomeを形成していることが推察された。さらにClaudin-1とCK8/18またはβ-catenin2組の二重染色ではClaudin-1の発現が乳頭状パターンの先端部のapicalに発現が増強し、CK8/18やβ-cateninと共局在するが、他の部分では減少していて、heterogeneityを示すことが判明した。以上のように、乳頭がんの乳頭状パターンでは細胞極性に異常があり、細胞間接着は減少する。そこには、細胞接着因子であるβ-cateninの分解異常が関与する可能性がある。本年度は、高細胞亜型、Hobnail亜型や低分化がんで、細胞骨格と細胞間接着のダイナミックな変化が関与することが明らかとなった。通常型乳頭癌から予後不良形質である亜型での解析に展開できていて、順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で、解析に必要な甲状腺がん組織試料は全て入手可能で、解析に必要な技術は確立している。同じがん組織の中でも中央部と浸潤部でその組織形態は均質でなく、LOP/LCC形質とEMT形質関連因子の発現は、組織形態によって特徴(違い)のあることが判明している。浸潤部にLOP/LCCパターンを示す乳頭がん、通常型乳頭がん、濾胞亜型乳頭がん、濾胞がん、低分化がん、未分化がん病理組織を対象に、乳頭状・濾胞状・LOP/LCC(微小乳頭状やHobnail、小胞巣状、充血性、孤在性)・STI・紡錘形パターンという、がん組織が示す形態要素ごとに、細胞間接着と極性(LOP/LCC形質)とEMTの観点から明らかにすることがゴールである。今後も、細胞間接着因子としてβ-catenin、E-cadherin、Tight junctionを形成し細胞極性に関与するClaudin 1, ZO、JAM-A、Occludin、EMT関連因子としてVimentin、Cytokeratin(CK)8/18の発現パターンを、多重蛍光免疫染色により明らかにしていく。細胞内局在の変化や異常から、LOP/LCC形質とEMT形質を解釈し、がん組織形態形成との関係を解明する。次年度は、未分化がん症例の解析を行う。さらに、高分化がんの中央部から浸潤部に及ぶ、LOP/LCC形質での発現変化を症例を増やして解析する。
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[Presentation] Molecular Pathological Characteristics of Benign Thyroid Nodules with Poorly Differentiated Component2022
Author(s)
Ueda M, Matsuda K, Kurohama H, Mussazhanova Z, Sailaubekova Y, Kondo H, Matsuoka Y, Otsubo C, Sato S, Yamashita H, Kawakami A, Nakashima M
Organizer
34th European Congress of Pathology
Int'l Joint Research
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