2022 Fiscal Year Research-status Report
微小乳頭状肺腺癌の分子基盤の解明 -空間的遺伝子発現解析によるアプローチ-
Project/Area Number |
22K15410
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
小池 千尋 横浜市立大学, 医学研究科, 客員講師 (70723344)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | EGFR変異肺腺癌 / 微小乳頭状亜型 / Visium 空間的発現解析 / バイオインフォマティクス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
EGFR変異を持つ肺腺癌(以下、EGFR肺腺癌)には、急速に進行し、また極めて予後不良な一群が存在する。研究代表者は、これまでに、EGFR肺腺癌の組織学的予後因子が微小乳頭状亜型であることを突き止め、また、微小乳頭状亜型成分をマイクロダイセクション法を用いて、他の亜型と分けて採取し、網羅的分子解析を行うことで、微小乳頭状亜型に特有の分子異状を同定することに成功している。しかし、一方で、今までの実験では、カバーガラスのない顕微鏡観察下の分取で判別精度が低い、分解能が低く亜型成分を網羅的に分取するのが難しい、長時間の作業でRNAが劣化する、などの問題点がある。そこで、本課題では問題点を解決すべく空間的発現解析法(VisiumTM: 組織切片上で約55μm格子毎の位置情報を保持しながら網羅的発現解析を行う革新的技術)を取り入れ、同一腫瘍内の多様な亜型成分の遺伝子発現特性を比較し、置換型から微小乳頭状亜型に至る多段階的な進展過程の分子基盤を追求する。 当該年度は、外科的切除されたEGFR変異を有する肺腺癌4症例のFFPEを用いて、空間的発現解析(VisiumTM)を行った。①低悪性度の肺胞置換型亜型成分と、②低乳頭状の増殖を示すpattern Lepidic with low papillary structure (LEPL)、③高悪性度の微小乳頭状亜型成分 の遺伝子発現量を比較したところ、①と②の間では100程度から数千の遺伝子で発現量の変化が起こり、一方②から③の間では多くて数十の変化しか起きていないことが分かった。今後はこれらの遺伝子変動の、マスターレギュレーション候補の遺伝子について、免疫組織化学的に、さらに症例数を増やして検討を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、外科的切除されたEGFR変異を有する肺腺癌4症例について、空間的発現解析 (VisiumTM)を用いて、微小乳頭状亜型成分と非微小乳頭状亜型成分それぞれの遺伝子発現パターンを解析し、微小乳頭状亜型成分で特異的に発現上昇している遺伝子変異を3個、発現低下している遺伝子を20個同定した。解析に用いるソフト(B browser)のアップデートの不具合が長引いていることにより、解析に時間を要している。
|
Strategy for Future Research Activity |
空間的発現解析(VisiumTM)で同定した、微小乳頭状成分に特異的に上昇している遺伝子について、免疫組織化学的に、さらに症例数を増やして検討を行う。また、IPAパスウェイ解析 (Ingenuity Pathway Analysis)を用いて、微小乳頭状亜型成分の形成に関わっていると思われるマスターレギュレーション遺伝子を同定することを試みる。
|
Causes of Carryover |
【理由】2022年度は、解析のために用いたソフト(B browser)のアップデートの不具合が長期に渡り、解析に時間がかかってしまった。このため、次の実験に進むことができず、物品費の執行が滞り、残額が生じた。 【使用計画】空間的遺伝子発現解析 Visiumで同定した、微小乳頭状亜型成分に特異的に上昇している遺伝子について、免疫組織化学的に症例数を増やして検討を行うため、抗体費などに物品費を支出する予定である。また、空間的遺伝子発現解析 Visium(FISH対応)の受託解析を追加で行う可能性がある。
|
Research Products
(3 results)