2022 Fiscal Year Research-status Report
KMT2Cに対するChIP解析を用いた胎児型肺腺癌の新たな治療標的候補の探索
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22K15419
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 理樹 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00770108)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高悪性度胎児型肺腺癌 / KMT2C / 腺癌 / クロマチン免疫沈降法 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺腺癌は最も頻度の高い肺悪性腫瘍であるが,その稀な組織亜型として高悪性度胎児型肺腺癌(H-FLAC)がある.申請者らの研究成果により,H-FLACは通常型肺腺癌とは異なった病理学的特徴を有する予後不良な腫瘍であることや,分子標的薬の適応となるようなドライバー変異の頻度が低く,PD-L1発現も低い傾向にあることがわかっている.その一方で,H-FLACは高い頻度でKMT2Cの変異を有しており,KMT2Cの機能異常がH-FLACの病態に関与している可能性が示唆されている.本研究はヒストンメチル化酵素の一種であるKMT2Cに着目し,クロマチン免疫沈降法(ChIP)を用いたエピゲノム解析を行うことにより,H-FLACの分子生物学的特徴を明らかにすることを目的とする.特に,KMT2Cの機能異常がDNA損傷応答やPARP1阻害剤感受性に関与しているとの報告があり,肺癌におけるPARP1阻害剤の有用性についての基盤的研究となることが期待される. 2022年度では,まずH-FLAC成分を含む肺腺癌17例と,比較対象群として通常型肺腺癌17例の選定を行った.いずれも外科的切除材料から抽出した.通常型肺腺癌症例は,H-FLAC症例の年齢,性別,進行期,喫煙歴の有無などとマッチングするものからランダムに選んで抽出した.次に,これらの症例のFFPE検体を用いて,KMT2Cの免疫組織化学的検討を行った.発現強度に応じてscore 0から3+に分類して評価した結果,H-FLACの成分ではscore 1+が9例,score 2+が6例,score 3+が2例だったのに対し,通常型肺腺癌ではscore 1+が1例,score 2+が4例,score 3+が12例であり,H-FLACにおいて有意なKMT2Cの発現低下が認められた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
症例の抽出は完了しており、解析も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,RNA-seqによる発現解析やChIP解析を進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
免疫染色等の試薬の一部は既存のものを使用した。そのため、新たに購入する試薬が予定よりも少ない量で済んだために残額が発生した。残額分は次年度以降の解析に用いる試薬や、学会発表する際の参加費や旅費等に使用する予定である。
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