2022 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of human pancreatic cancer cell-human pancreatic stellate cell interaction by in vitro cell co-culture system
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22K15434
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
米谷 達哉 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (40915196)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膵臓がん / がん微小環境 / 細胞間相互作用 / in vitro細胞共培養系 / 膵がんオルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は「ヒト膵がん細胞-ヒト膵臓星細胞間相互作用のメカニズム解明」である。先ず始めに、細胞間相互作用メカニズムを正確に解析可能なツールとしてin vitro細胞共培養系の開発を試みた。 本研究独自の細胞共培養系では臨床検体由来ヒト膵がん細胞とヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)由来ヒト星細胞を応用し、ヒト細胞のみを安定的に使用することを可能にした。さらに、本細胞共培養系を用いた検証結果から、静止期ヒト星細胞はヒト膵がん細胞の細胞増殖を促進することや、活性化ヒト星細胞がヒト膵がん細胞の抗がん剤耐性を上昇させることが見出された。また、作製した組織様細胞共培養体は膵がん組織のいくつかの組織学的特徴を再現することも確認された。即ち、膵がん組織を模倣し、細胞間相互作用を反映するin vitro細胞共培養系の開発に成功した。 次に、ヒト膵がん細胞-ヒト星細胞間相互作用メカニズムの解明を試みる前に、異なる臨床検体由来の複数ヒト膵がん細胞を使用し、in vitro細胞共培養を行なった。その結果、各ヒト膵がん細胞によって異なる組織構造と細胞増殖が観察された。つまり、星細胞からのシグナルに対し、各ヒト膵がん細胞はそれぞれ異なる応答することが示された。各ヒト膵がん細胞の遺伝的背景がこれらの差異を生じさせる原因であると考えられる。 今後の研究では、がん化後の遺伝的背景が多様化する前段階に焦点を当て、細胞間相互作用の解析をする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で「膵がん組織を模倣し、細胞間相互作用を反映するin vitro細胞共培養系を開発した」ことは大きな進展である。さらに、静止型ヒト星細胞がヒト膵がん細胞の増殖を促進することも新規な発見である。今後の解析で、本細胞共培養系を応用することにより、過去の研究では得られなかった知見が得られることが期待される。 また、ヒト膵がん細胞はその由来する臨床検体ごとに異なる応答を示すことが確認された。これは、本細胞共培養系が各々ヒト膵がん細胞の特徴をある程度反映できる、さらに、単一または数種の臨床検体由来ヒト膵がん細胞を対象とすることは、各ヒト膵がん細胞に特異的に生じる細胞間相互作用を対象とする可能性が極めて高いことを示している。 以上の結果は今後の方向性を決定するための十分な研究成果であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
異なる臨床検体由来のヒト膵がん細胞は細胞間シグナルに対し、それぞれ異なった応答を示すと考えられる。これは、膵がんの進行段階等に依存する遺伝的背景の違いが影響していると考えられる。この結果を基に、個体間で幅広く共通する細胞間相互作用メカニズムを解析するため、遺伝的背景の特異性が極力少ない正常組織および前癌段階の膵管細胞に焦点を当て、研究を遂行する。 ヒト正常膵臓組織からヒト正常膵管細胞を作製し、変異型Krasの導入やp53の遺伝子破壊により、さらに前癌段階のヒト膵管細胞を作製する。それぞれの段階のヒト膵管細胞とヒト星細胞の共培養を行い、その細胞間相互作用を検証する。 細胞間相互作用の評価法として、主に「共培養条件下の活性化型ヒト星細胞共培養依存的なヒト膵がん細胞の抗がん剤耐性」を評価する。ヒト膵管細胞の正常段階と前癌段階間で抗がん剤耐性に有意な差が観察された場合は、その2つの段階間の遺伝子発現比較を行う。差が観察されなかった場合、前癌段階ヒト膵管細胞にCRISPR/Cas9スクリーニング等による広範囲な遺伝子変異を導入する。その後、抗がん剤処理下で共培養を行い、抗がん剤耐性を獲得したヒト膵管細胞をピックアップ、関連する遺伝子の同定を行う。遺伝子発現解析にはシングルセルRNAシーケンスやVisiumを用いことで、詳細な解析もする予定である。以上より同定した遺伝子を介したヒト膵がん細胞の抗がん剤耐性獲得、即ちヒト膵管(がん)細胞-ヒト星細胞間メカニズム解明を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、僅かな残高であり、少額の使用目的が無かったためである。 使用計画としては、翌年度分に合算し、物品費に使用する。
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Research Products
(1 results)