2023 Fiscal Year Research-status Report
マンソン裂頭条虫由来分子による抑制性レセプターの探索とMAPK経路抑制機序の解明
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22K15451
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
近藤 陽子 鳥取大学, 医学部, 助教 (50632973)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マンソン裂頭条虫 / ES産物 / P-ISF / アフィニティ精製 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究者らはマンソン裂頭条虫のプレロセルコイドが分泌する免疫抑制因子に着目し、これまでにプレロセルコイドの分泌物(ES)がLPS刺激されたマクロファージの活性化を抑制する事を明らかにしてきた。また、ES中からマクロファージに対する免疫抑制作用を有する糖タンパク質を同定し、Plerocercoid-immunosuppressive factor:P-ISFと命名した。さらに、ESを超遠心して得た細胞外小胞(EV)にもLPS刺激によるマクロファージの活性化を抑制する作用を見出した。EVとP-ISFは異なる画分に検出されたため、独立した免疫抑制作用であることがわかった。EV中の責任因子の探索により、micro RNAがその一部を担っている可能性を見出した。 一方で、P-ISFの作用機序の探索については、P-ISFの精製に使用していたレクチンカラムの製造が中止になり入手できなくなった為、P-ISFの新しい精製法を模索した結果、リコンビナントタンパク質に対する抗体を用いたアフィニティーカラムの作製に着手した。コムギ胚芽タンパク質合成系でP-ISFのリコンビナントタンパク質(rP-ISF)を作製し、それをラビットに免疫することでES中のP-ISFを認識できる特異的な抗rP-ISF血清を得ることに成功した。この血清をrP-ISFを用いて精製し、精製した抗体をカラムにカップリングしてアフィニティカラムを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ESから精製したP-ISFを用いた実験を予定していたが、P-ISFの精製に必要なレクチンカラムの製造が中止になったことで新しい精製法の構築を余儀なくされた。複数種のタンパク質合成系を用いてリコンビナントタンパク質の作製を試みたが、P-ISFはマンソン裂頭条虫の近縁種にしか存在しない、システインが豊富な新規の糖タンパク質であるためか、生理活性のあるリコンビナントタンパク質は作製できなかった。よって、リコンビナントタンパク質を抗原に抗体を作製し、特異抗体を用いたアフィニティカラムを作製した。これによりP-ISFの供給に活路を見出し、滞っていたP-ISFを用いた実験に着手できる見込みとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
P-ISFの樹状細胞に対する作用の解析及び相互作用分子の探索について、実験に使用するP-ISFの精製方法を変更し、特異抗体によるアフィニティ精製を行う。 次年度は、精製したP-ISFを樹状細胞に添加してプレインキュベートした後、LPSで刺激した時の表面抗原の発現やサイトカインの産生を解析することでP-ISFの樹状細胞への影響を明らかにする。また、P-ISFとマクロファージのライセートを混合して免疫沈降を行い、相互作用分子の探索を行う。また、P-ISFの非存在下と存在下でマクロファージをLPS刺激し、RNAを抽出してRNAシークエンスを行うことでLPS刺激に対する細胞内の遺伝子発現の変化を網羅的に解析し、P-ISFの細胞内シグナル伝達経路に及ぼす影響について手がかりを得たい。
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Causes of Carryover |
今年度実施予定だった樹状細胞の解析を次年度行うことになったので次年度使用額が生じた。繰り越された差額分に関しては樹状細胞の解析に必要な試薬の購入に充てる。
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