2023 Fiscal Year Research-status Report
結核菌・抗酸菌の遺伝子改変のためのマイコファージ様形質導入粒子の簡易作製法
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22K15456
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
満仲 翔一 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 特任助教 (10836406)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | バクテリオファージ / 合成生物学 / 遺伝子組換え |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、溶原性抗酸菌ファージYのパッケージングシグナル (以下、PSと記す) の探索を行った。以前同定した同じクラスターに属するファージXのPSを参考に、ファージYのゲノム配列の一部を挿入したプラスミドを構築した。このプラスミドを保持する抗酸菌を介してファージYのライセートを調製し、抗酸菌に感染させ、選択培地に塗布した。その結果、選択培地上に複数のコロニーを確認した。これらのコロニーをPCRで確認したところ、構築したプラスミドを保持していた。この結果は調製したライセートには形質導入粒子が含まれていることを示す。さらに、プラスミドに挿入するファージゲノムの領域を狭めて同様の解析を行った結果、特定の500 bpの配列が挿入されれば形質導入粒子が産生されることが判明した。この500 bp配列をPSの最小単位とした。 また、ファージ合成改変を介して、温度感受性ファージYの創出も試みた。ファージYは溶原化に必須の抑制遺伝子に特定の変異が入ると、30度では溶原化できるが、37度では溶原化できない温度感受性ファージになることが既に報告されている。変異型抑制遺伝子を人工合成し、抑制遺伝子を除いて増幅したファージゲノム断片とin vitroで連結し、抗酸菌に導入することで温度感受性ファージYを創出した。これを抗酸菌上に滴下したところ、創出したファージは、30度では濁ったプラークを、37度では透明なプラークを形成した。また、濁ったプラークから単離された溶原菌 (以下、溶原菌(ts)と記す)を30度でOD600 = 1付近まで培養し、引き続き37度で培養を続けた結果、濁度の低下及び子孫ファージの産生が確認された。これらの結果から、創出した温度感受性ファージYは、報告通り、30度では溶原化できるが、37度では溶原化状態を維持できないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は、溶原菌(ts)のPS欠失株を用いて、温度依存的に形質導入粒子を産生させることを達成目標としていたが、溶原菌(ts)のPS欠失株の作製が既存の抗酸菌の遺伝子改変手法では難しく、遅れが生じた。今後は、PSを薬剤耐性遺伝子と置換した温度感受性ファージゲノムを導入することで、溶原菌(ts)のPS欠失株を構築する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
溶原菌(ts)のPS欠失株を構築後、PSを含むプラスミドを導入し、温度依存的に形質導入粒子が産生されるかを検証する。野生型ファージは産生されず、形質導入粒子だけが産生されることが確認された場合、抗酸菌の遺伝子組換えや特定のDNA配列を有する抗酸菌の殺菌などに応用できることを実証する。
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Causes of Carryover |
研究に遅れが生じたため、当該年度分の支給額を使い切ることができなかった。遅れた研究を行うために、消耗品費として使用する。
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