2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K15463
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
青木 英莉子 宮崎大学, フロンティア科学総合研究センター, 研究員 (80822874)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | BAM複合体 / βバレル / 大腸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸菌の外膜に存在するBAM複合体は外膜タンパク質であるBamAと4つのリポタンパク質(BamB、BamC、BamD、BamE)で構成される。昨年度はBamB-Eの機能を調べるために、主要構成要素であるBamAとBamB-Eのいずれか1つのタンパク質で構成される複合体の再構成を試みた。しかしながら、複合体の再構成に想定より時間がかかっている為、今年度はBamB-Eのうち1つの遺伝子が欠損した大腸菌からBAM複合体を含む膜画分を分離し、これを使用して基質タンパク質の1つであるインフルエンザ菌由来アドへシン(Hia)の膜挿入を観察した。しかしながら、完全なBAM複合体とBamB-Eのいずれかがが欠損したBAM複合体ではHiaの膜挿入に違いが見られなかった。そのため、BamB-Eの役割を新たな視点から観察するために、ピロリ菌のBAM複合体と基質を使用した実験を行った。ピロリ菌BAM複合体は、大腸菌のBAM複合体と異なり細菌の生存に必須であるとされているBamAとBamDのみで構成されている。そこでピロリ菌BAM複合体と大腸菌BAM複合体の反応を比較することによって構成要素の違いによる影響を明らかにすることにした。そして、ピロリ菌BAM複合体を使用した基質タンパク質の膜挿入反応の観察方法の確立を試みた。最初に基質とするピロリ菌外膜タンパク質のクローニングを行い、無細胞合成系で発現させた。この合成した基質とピロリ菌BAM複合体を含む膜画分を使用して膜挿入反応を観察した。その結果、ピロリ菌BAM複合体による基質タンパク質の膜挿入反応に由来すると考えられる現象の観察に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、一部のタンパク質を欠損させたBAM複合体を用いてインフルエンザ菌由来アドへシンの膜挿入反応への影響を観察してBAM複合体リポタンパク質の役割を調査する予定であった。しかし、完全なBAM複合体と1つのリポタンパク質が欠損したBAM複合体では膜挿入反応に違いが観察されなかった。それにより当初の実験計画の遅れが生じ、計画の一部を変更する必要が生じた。このため当初の実験計画にない大腸菌と異なる構成のBAM複合体を持つピロリ菌を使用して基質タンパク質の膜挿入反応を観察した。最初にピロリ菌BAM複合体による基質タンパク質の膜挿入反応の追跡方法の確立を試みた。ピロリ菌BAM複合体による基質タンパク質の膜挿入機構は大腸菌と比較して研究が進んでいないため、未知の要素が多数あったが基質タンパク質の膜挿入反応の観察に成功した。この成功により、ある程度遅れを取り戻したと考えられる。そのため、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
ピロリ菌BAM複合体を使用した基質タンパク質の膜挿入反応の観察に成功した。今後は、ピロリ菌と大腸菌におけるBAM複合の構成要素数の違いが与える膜挿入反応の違いを明らかにする。また、ピロリ菌と大腸菌の基質リストの比較からBAMの構成要素の違いが基質の多様性や特徴に影響を及ぼしているかを調査する。
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Causes of Carryover |
本来の実験計画が予定通りに遂行できずに計画を変更したため今年度の支出が予定より減少した。しかし、変更によって来年度に必要となる試薬等が増加する予定であるため来年度に合わせて使用することにした。
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