2022 Fiscal Year Research-status Report
RSウイルスの病原性発現および感染拡大におけるシンシチウム形成の重要性の検討
Project/Area Number |
22K15467
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
高橋 龍樹 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30908827)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | RSウイルス / リバースジェネティクス / シンシチウム / F蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳幼児に重篤な呼吸器症状を引き起こすRSウイルスは、特徴的なシンシチウムを形成する。本研究では、RSウイルスのシンシチウム形成能と、病原性および感染拡大能の関係を検証している。具体的には、RSウイルスのF蛋白質(シンシチウムの形成に寄与)について、 ① シンシチウム形成能の高い株と低い株にどのような違いがあるか、② シンシチウム形成能に重要なアミノ酸配列は何か検証する。さらにはマウスモデルを用いて③ シンシチウム形成能の高い株は、病原性および感染拡大能も高いのか検討する。本年度、これらのための実験系の確立に成功した。まず、①および②で用いる、シンシチウム形成能を定量的に評価するシステムの確立に成功した。具体的には、ウイルス感染等によるシンシチウム形成の際に発現されるルシフェラーゼ活性を測定することで、本形成能を定量できるようになった。また、②のためのウイルスを人工合成する技術(リバースジェネティクス技術)の確立に成功した。すなわち、多様なシンシチウム形成能を有するウイルス株に応用できるリバースジェネティクス技術の確立に成功した。さらに、シンシチウムを定性的に評価可能なGFP発現ウイルス、並びにウイルスの感染拡大能を定量的に評価可能なルシフェラーゼ発現ウイルスの確立に成功した。また、③のマウス実験のためのRSVマウスモデルの作出を行った。よりヒト患者と類似の症状を引き起こすRSウイルスマウスモデルの確立を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採択時の計画では、1年目は、4つの実験系の確立ならびに準備に主軸を置いていた。① シンシチウム形成能を定量的に評価するシステムの確立、② マウスモデルの準備、③ リバースジェネティクス法の確立、④ F蛋白質発現プラスミドの構築である。これらの確立および準備についておおむね順調に進展している。 具体的には、①細胞融合時に、ルシフェラーゼを発現する細胞の確立に成功した。本技術により、シンシチウム形成を定量的に評価できることとなった。② マウスにおけるRSウイルスの連続継代により、マウス馴化株の確立を試みている。一定の症状を示す馴化株の確立に成功した。③ リバースジェネティクス技術の確立を実施し、GFP発現ウイルス, ルシフェラーゼ発現ウイルスの確立に成功した。 ④ F蛋白質発現プラスミドについても、計画していた10個程度のうち、5個のプラスミドについて構築が完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
採択時の研究計画を引き続き遂行する。具体的には、F蛋白質発現プラスミドを構築した後、それぞれのプラスミドの蛋白質発現を確認する。その後、シンシチウム形成能の定量的解析を実施する。本検討にあたり構築したプラスミドを用いた解析と、リバースジェネティクス技術により確立されたウイルスを用いた解析を実施する。これらの解析により、シンシチウム形成に重要なアミノ酸の同定に到達した後、マウス感染実験に進む予定である。本実験は、予定より早く進むことが予測されるため、3年目以降に実施予定であったマウス感染実験を本年度(2年目)から実施する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、主に培養細胞実験・マウス感染実験など、消耗品を多く使用する実験が次年度以降に集中することとなったため、本年度は、計画的に使用を制限することとなった。 次年度は、これらの実験を実施するため、主にマウス購入費や抗体, トランスフェクション試薬等の消耗品費に使用する予定である。また、学会参加等のために、一部予算を旅費に計上している。
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