2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K15469
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高田 光輔 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教(常勤) (40881701)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | RNAウイルス / ゲノム進化 / SARS-CoV-2 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルスのゲノム突然変異率には、ウイルスが持つRNA依存RNAポリメラーゼの忠実性や、校正機能などが影響する。RNAウイルスの一種であるコロナウイルスは、校正機能を担う酵素(nsp14)を備えているため、RNAウイルスの中ではゲノム突然変異が起こりにくいことが知られている(Sjaarda et al. mSphere. 2021)。しかしながら、SARS-CoV-2は、短期間の間に、ゲノム突然変異が起こり、多様な変異株が出現している。本研究の目的は、SARS-CoV-2のゲノム変異機構の一端を明らかにし、RNAウイルスの生存戦略として"ゲノム突然変異を起こしやすいウイルス株"が出現する意味を提案することである。 本年度では、公共データベースより取得したSARS-CoV-2ゲノム配列を、nsp14の配列でクラスタリングし、ゲノム進化速度を解析した。その結果、nsp14-P203Lを持つウイルス株はゲノム進化速度が大きい傾向があることが示された。次に、nsp14-P203L変異ウイルスならびに野生型ウイルスを作出し、VeroE6/TMPRSS2細胞におけるウイルス性状を比較した。その結果、nsp14-P203L変異体は野生型ウイルスと比較し、わずかに増殖効率が低下するが、VeroE6/TMPRSS2細胞で増殖したnsp14-P203L変異体のゲノム変異は、野生型ウイルスと同程度であることが明らかとなった。また、感受性の高い動物(シリアンハムスター)に野生型ウイルスまたは変異型ウイルスを感染し、生体におけるウイルス性状を比較した。その結果、nsp14-P203L変異体は、野生型ウイルスと同程度の病原性や増殖性を示し、ハムスターの肺で増殖したnsp14-P203L変異体は野生型ウイルスよりも多様なゲノム変異が検出されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
公共データベース(GISAIDやGenBank)より取得したSARS-CoV-2ゲノム配列を、nsp14の配列でクラスタリングし、ゲノム進化速度やゲノム多様性を解析したところ、nsp14-P203Lを持つウイルス株はゲノム進化速度が大きい傾向があることを明らかにした。さらに、リバースジェネティクス法でnsp14-P203Lを持つ組換えウイルスを作出し、培養細胞と動物モデルを用いウイルス性状を解析した。nsp14-P203L変異体はシリアンハムスターの肺においてゲノム多様性が増加することが示された。研究計画は概ね順調に進んでおり、今後さらなる発展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
自然界において、nsp14変異ウイルス(”ゲノム突然変異を起こしやすいウイルス株”)が出現する意味を提案するため、nsp14-P203L変異体が、ウイルスの新たな環境への適応に寄与しうるかを検証する。昨年度の成果から、nsp14-P203L変異体はシリアンハムスターの肺においてゲノム多様性が増加することが示された。そこで、野生型ウイルスまたは、nsp14変異型ウイルスを、低感受性動物(一度ウイルス感染を経験し免疫を獲得したハムスターなど)へ感染し、新たな環境に適応したウイルスが出現するか調べる。
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Causes of Carryover |
今年度、当初の予定以上に順調に実験が進んだため次年度使用額が生じた。次年度にを予定している動物実験や次世代シークエンス解析の費用や、得られた研究成果を国際学会での発表するための旅費に当てる。
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Research Products
(6 results)