2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K15510
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Research Institution | Osaka International Cancer Institute |
Principal Investigator |
平塚 徹 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 腫瘍増殖制御学部研究員 (30893028)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ERK / 膵がん / 揺らぎ / ライブイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞内シグナルであるEGFR-ERK経路に注目し、その時間的ダイナミクスが癌に与える影響を明らかにし、そのダイナミクスを考慮した抗癌剤投与プログラムを創出することを目指す。特に、申請者がこれまでに報告している「ERK活性の揺らぎ」に注目し、それを指標にした新しい抗がん剤治療効果の評価を行う。 現在、当初の計画通り、膵がん細胞のオルガノイド培養、ERK活性のライブイメージングを進めている。オルガノイド培養においては、それを包埋するマトリゲル内での空間的な位置などの影響から、当初、再現性のあるデータを取得することが困難であった。その問題に対し、オルガノイドを非選択かつ網羅的にライブイメージングする実験系を立ち上げ、さらにその画像から細胞を自動認識し、オルガノイドを細胞クラスターとして解析する画像解析プログラムを構築した。これにより、膵がん細胞の持つ不均一性という情報を再現性よく得ることが可能になり、EGFR-ERKシグナル経路の阻害薬の効果を統計的な信頼性を持って評価することが可能となった。これによって例えば、MEK阻害剤による細胞増殖抑制効果は5%のがん細胞で認められず、阻害剤の効果がない場合と同様の増殖活性を示すことがわかった。 さらに、膵がん細胞を免疫不全マウスに移植した同所性担がんモデルにおいても生体ライブイメージングを進めており、イメージングウィンドウの導入により、およそ1ヶ月にわたって断続的にライブイメージングを行うことに成功している。 時間的に変化する抗がん剤投与の方法については、無数の可能性があるため様々な条件を検討しているが、上記の定量的な解析手法によって、個々の薬剤の作用時間、効果のばらつきが明らかになってきており、2年目も同様のアプローチを用いて膵がんの増殖を抑制する最適な抗がん剤投与プログラムを最適化していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、膵がんオルガノイドの培養について、その不均一性からライブイメージングによるアプローチが困難である問題があったが、不均一性さえも全て包括的に評価する多視野撮影および自動画像解析プラットフォームの確立によってこれを克服している。 抗がん剤の効果についても予定通り、イメージングデータの取得と解析を進めており、確立したイメージング手法を適用することによって安定的に効果の評価と最適化を進めている。抗がん剤投与プログラムの多様性から、どの方法が最終的に最適であるかを結論づけるにはまだ時間を要するため、それを2年目の課題と考えている。 生体ライブイメージングについても、担がん、腫瘍形成、長期観察、薬物投与など順調に進んでいる。1年目において必要な実験系の確立はほぼ全て終了していると言える。培養細胞と同様、薬剤の投与プログラムの最適化については、様々なものを検討中である。生体ライブイメージング画像の解析手法については、やや課題が残る部分があるものの、その解決方法についても既に目処がついているため、今のままの方針で続けていきたい。 以上のような状況を総合的に考え、本研究は「おおむね順調に進展している。」と考えている。当初の研究計画とも大きな変更がないため、予定通り2年目も研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、膵がんオルガノイドの培養の不均一性から再現性のあるデータの取得に難渋したことがあり、画像データ取得が遅れていたが、現在、自動化画像解析プラットフォーム確立によって、およそ計画通りの進展をしている。このプラットフォームを有効に活用することによって、多くの薬剤投与プログラムをプログラムを試行し、より新規性、信頼性の高い薬剤投与プログラムを確立したいと考えている。 生体ライブイメージングについては、培養オルガノイドよりも時間がかかる実験であるのが難点ではあるが、現在、培養細胞と生体の両方の実験を並行して進めているため、解析結果を相互にフィードバックさせることによって効率的に実験を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
画像解析について高額のコンピューターの購入を検討していたが、クラウドベースのプログラム実行サービスを利用することによって、それを購入することなく研究を進めることが可能となった。一方で、研究の進行によって、抗がん剤の種類の追加、様々な増殖因子の購入などが次年度必要となると考えられるため、そのための費用として次年度に使用する予定である。
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