2022 Fiscal Year Research-status Report
アミノ酸輸送体LAT1依存的リン酸化シグナルにおけるチロシンリン酸化制御機構解明
Project/Area Number |
22K15512
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡西 広樹 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70792589)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アミノ酸 / トランスポーター / プロテオミクス / リン酸化プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞では,細胞増殖等の調節に関わるタンパク質の翻訳後修飾リン酸化ネットワークの制御に異常が生じている.アミノ酸はこのリン酸化ネットワークを刺激するシグナル分子としての機能を持つ.がん細胞特異的アミノ酸トランスポーターLAT1は,がん特異的な細胞内環境形成に寄与するアミノ酸シグナル機構を構成しているものと考えられる.申請者はこれまで,固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー (IMAC) によるリン酸化濃縮法を用いたプロテオーム解析により,LAT1を起点としたリン酸化ネットワークを解明してきた.この方法は主にセリン・スレオニンのリン酸化動態の広範な解明には非常に有用である一方で,悪性腫瘍の発生に深く関与する受容体型・非受容体型チロシンキナーゼが触媒するチロシンのリン酸化は微量なため同定が難しく,より特異的な方法が必要であった.本年度では,まず (1) 非常に特異性の高い競合的LAT1阻害薬ナンブランラト (JPH203) により有意な抗腫瘍効果を評価済みの胆道がん細胞株3種類(KKU-055, KKU-100, KKU-213) において,タンパク質チロシンリン酸化ネットワーク変動に加えて、グローバルリン酸化ネットワーク変動および発現タンパク質変動を詳細に調べた.具体的には,LAT1阻害薬の添加の有無のそれぞれの条件で24 時間処理した細胞サンプルから,相間移動溶解剤による抽出法でタンパク質を抽出し,サンプル調製を行い,定量チロシンリン酸化・定量リン酸化プロテオーム解析による修飾動態差異解析,定量プロテオーム解析による発現差異解析に供した.これらの結果を統計学的抽出およびデータベース化し,統計学的に有意な発現変動分子群,およびリン酸化修飾変動分子群を分子ネットワーク解析ソフトIPAによって解析した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
確立したチロシン特異的なリン酸化プロテオミクスの系の評価を行い,十分に研究に適用可能であることが確認できた.また,実際の定量サンプルにおいても問題なく有効なデータが得られることがわかった. さらに,すでにLAT1阻害薬を処理した3細胞株においてサンプルを準備し,チロシンリン酸化プロテオミクス,グローバルリン酸化プロテオミクス,プロテオミクスを実施し、チロシンリン酸化変動・グローバルリン酸化変動・タンパク質発現変動のデータを得ている.これらについて,データ解析および統計解析を行い,データベース化も行っている.さらにIPA などの各種Bioinfomatics 解析も実施しており,活性変動経路や調節因子,責任キナーゼの情報を抽出済みである.これらは今年度に実施することを目標としていた研究内容であり,現在までの研究の進捗状況はおおむね順調に進展しているものと判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
LAT1阻害剤を処理した3種類の胆道がん細胞株に対して,横断的に実施した定量チロシンリン酸化プロテオーム解析・定量リン酸化プロテオーム解析・プロテオーム解析によって,LAT1阻害により変動する生物学的経路や調節因子,キナーゼが明らかとなった.なかでも細胞間で共通して変動した因子は特に重要と考えられる.そこで,それら因子についてLAT1阻害による細胞増殖抑制との関係を調査する.またそれらの検証を,特異的阻害剤・siRNAによるノックダウン等を利用して行い,治療標的候補分子としての臨床応用の可能性の検討を行う. また,本年度では胆道がん細胞株を対象としたが,それ以外のがん由来の細胞においても同様の解析を行う.その結果,LAT1阻害に伴う統計学的に有意な因子について,特にチロシンリン酸化修飾についてデータベースを拡充する.これによって,各がん種に特異的・共通のLAT1阻害依存的チロシンリン酸化経路等が解明され,LAT1を標的とした各がん種の治療法に新たな方向性を提示することが期待できる. さらに,本年度では24時間という比較的長時間でのLAT1阻害処理による影響を調べた.今後はさらに,より短時間ないしは長時間の時間依存的なチロシンリン酸化変化についても解析を行うことで詳細な情報を得る.
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Causes of Carryover |
研究進捗の一部を次年度に繰り越した.次年度以降に購入予定である.
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