2022 Fiscal Year Research-status Report
乳がん肺転移ニッチを構成する肺線維芽細胞の多様性の理解と転移抑制治療への応用
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22K15515
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
富永 香菜 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (50779569)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 乳がん / がん関連線維芽細胞 / 浸潤・転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん関連線維芽細胞(CAFs)はTGFβやSDF-1などのサイトカインを分泌し、がん細胞との相互作用により腫瘍の悪性化に寄与している細胞である。準備段階の研究において、ヒト乳がん由来のCAFsとの接触により高転移性を獲得したヒト乳がん細胞を免疫不全マウスに移植したところ、転移巣のマウスホスト由来の線維芽細胞にてCAFsのマーカータンパク(α-SMA, Periostin, Fibronectin, Tenascin C)が高発現していることを見出した。したがって、がん転移過程で転移巣の肺線維芽細胞がCAFsの特徴を獲得し、転移巣でも原発巣と同様にCAFsのような特徴をもつ線維芽細胞が転移したがん細胞の増殖に寄与している可能性があると考えた。また、我々は、乳がんをモデルとしてがん幹細胞から分泌される増殖因子が、がん幹細胞の周囲を取り巻く線維芽細胞や血管内皮細胞、免疫細胞を含んだがん微小環境(ニッチ)の活性化を促すことにより、がん幹細胞の未分化性の維持に寄与していることを発見している。そこで本研究では、乳がんの肺転移をモデルとし、がん幹細胞の転移によって転移ニッチ形成に関わる肺線維芽細胞の多様性を単一細胞レベルの遺伝子発現解析を行うことにより肺転移巣形成の過程を分子レベルで解明することを目的とする。本年度は、実験設備のセットアップおよび移植実験に使用するがん幹細胞の樹立を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度に所属機関の移動があり、新たにこれまでと同様の実験環境を整えることに時間を要したためやや遅れていると判断した。しかし、がん幹細胞と転移ニッチを構成する細胞の相互作用に関する当初の計画では予期していなかった興味深い知見を得ており、2023年度はこの結果を踏まえて研究を加速させたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
乳がん細胞と転移巣における線維芽細胞のダイバーシティ形成を解明するために、マウス肺由来線維芽細胞を用いてシングルセル解析による網羅的遺伝子発現解析を試みる。先行研究でヒト乳がん細胞移植後20日目に微小転移巣を形成することを確認していることから、より早期の転移ニッチ形成メカニズムを解明するために、がん細胞移植後10日目、20日目、30日目のマウス肺線維芽細胞を解析する予定にしている。
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Causes of Carryover |
2022年度に所属機関の移動があり、実験設備や研究環境のセットアップなどで時間を要したため、当初の予定よりも実験の進行が遅くなっているため。2023年度中にシングルセル解析の予定があるため、次年度使用額については、解析費用に当てる予定である。
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