2022 Fiscal Year Research-status Report
AM-RAMP2系による高内皮細静脈の機能制御と癌転移抑制法開発への展開
Project/Area Number |
22K15524
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田中 愛 信州大学, 医学部, 日本学術振興会特別研究員RPD (90786401)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アドレノメデュリン / リンパ節転移 / 血管恒常性 / 転移前土壌 / 高内皮細静脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
リンパ節への転移は長らく、リンパ行性転移と捉えられてきた。一方最近になり、リンパ節から他の臓器への転移は、リンパ節内血管を介して起こる可能性が報告された。我々は、アドレノメデュリン(AM)と、その受容体活性調節タンパク:RAMP2が、血管恒常性維持に必須であること、RAMP2-/-では、血管障害による転移前土壌が形成されることから、血管正常化に基づく癌転移抑制法を提唱してきた。その中で、AM-RAMP2系がリンパ節内の血管、高内皮細静脈(HEV)の構造・機能維持にも重要な役割を担うことを発見した。本研究では、AM-RAMP2系によるHEV恒常性維持機能を選択的に操作することで、癌転移を抑制する治療法開発への展開を考えた。 ルイス肺癌細胞 (LLC) を足底部に移植すると、誘導型血管内皮細胞特異的RAMP2ノックアウトマウス(DI-E-RAMP2-/)-ではリンパ節内に存在するHEVの破綻により、リンパ節転移が促進することが明らかとなった。DI-E-RAMP2-/-では、癌転移したリンパ節内のT細胞数の有意な減少と樹状細胞の分布異常が認められ、リンパ球の誘導や接着に関与するケモカインや接着因子の発現も低下していた。さらに電顕による観察では、HEVを形成する高内皮細胞が基底膜から剥離し、断裂や空砲化などの構造異常を呈することが確認された。これらの結果から、AM-RAMP2系はHEVの正常な機能維持に重要であることが示された。一方で、リンパ管内皮細胞特異的RAMP2ノックアウトマウス(DI-LE-RAMP2-/-)では、リンパ節転移に差は認めず、ケモカインや接着因子の遺伝子発現も変化が見られなかった。興味深いことに、DI-E-RAMP2-/-のリンパ節では、癌細胞はリンパ管からではなく、HEVから組織内に浸潤する様子が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までの解析で、DI-E-RAMP2-/-ではリンパ節転移が亢進する結果が得られ、それらはHEVの構造や機能異常によって引き起こされることを明らかとした。そこで、転移したリンパ節を透明化し、HEVと癌細胞の局在を明らかにすることを考えた。透明化処理の工程が多く、リンパ節の透明化条件を設定するまでに時間を要したが、脱脂をしっかりと行うことで染色性も向上した。新たに樹立したGFP遺伝子導入LLC細胞を移植し、転移したリンパ節を透明化し、MECA-79抗体によってHEVの染色を行うと、DI-E-RAMP2-/-においては、LLCがリンパ管からではなく、HEVの走行に沿ってリンパ節内に侵入し、増殖する様子が観察された。従来、リンパ節転移はリンパ管を介したものと考えられていたが、血行性を介した転移形式も存在することが示唆された。 さらに、RAMP2欠損誘導後の血管内皮細胞を電顕で観察すると、内皮細胞表面に無数の微小突起や細胞外小胞(エクソソーム)が確認された。そこで、初代培養内皮細胞からエクソソームを回収し、LLC細胞のスクラッチアッセイに対しての投与実験を行った。その結果、controlに比べて、DI-E-RAMP2-/-由来エクソソームで刺激したLLC細胞は増殖能や遊走能が亢進していた。次に、エクソソームの生成を阻害するGW4869を投与して同様の実験を行うと、controlと同程度まで、増殖・遊走能が低下した。エクソソームマイクロアレイの結果から、RAMP2欠損によってmiR-937が最も発現亢進していることが明らかとなった。miR-937は結腸癌患者において、予後不良因子であることが報告されている。DI-E-RAMP2-/-では、RAMP2の欠損により、内皮細胞のエクソソーム産生が亢進し、それらが癌の転移に促進的に働いた可能性が考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
局所で増殖した癌細胞は、全身に張り巡らされたリンパ管を通してリンパ節へ流入し、最終的に胸管を介して血管内に侵入すると考えられてきた。しかし、最近、リンパ節転移は血管を介した血行性転移によって生じる可能性が報告された(Brown M et al. Science.2018)。そこで本研究では、AM-RAMP2系の持つ血管恒常性制御作用に注目し、リンパ節転移を抑制する方法を検討している。本年度までの検討で、LLCを用いてリンパ節への転移モデルを作成したところ、DI-E-RAMP2-/-では、リンパ節転移が亢進する結果が得られた。DI-E-RAMP2-/-ではリンパ節内の血管構造にも異常を認め、高内皮細静脈(HEV)を介してリンパ節転移が亢進したと考えられた。 そこで次年度は、血管内皮細胞特異的RAMP2過剰発現マウス(E-RAMP2 Tg)を用いたリンパ節転移の検討を進める。AM-RAMP2系を活性化することで、HEVの構造を安定化し、T細胞の強制動員が可能となるのか、癌細胞がHEVから浸潤することを防ぐのか検討する。最近、癌免疫療法(ICI)が奏功しない症例も報告される様になり、ICI単独ではなく、併用療法によって効果を高める治療法に注目が集まるようになってきている。E-RAMP2 Tgに抗PD-1抗体を併用した場合、T細胞の再活性化の効果がさらに上乗せできるのか、生存率の評価も含めた解析を進める。これによりAM-RAMP2系が、ICIにおける免疫ホットスポットとして働くことを検証したい。 さらに、エクソソームアレイの結果からは、癌転移促進因子としてmiR-937が候補に挙げられた。実際にmiR-937はリンパ節転移や肝転移との相関があることも報告されている。そこで、miR-937に対する阻害剤を用いた細胞実験も進める。
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Research Products
(6 results)