2022 Fiscal Year Research-status Report
発生部位による遺伝子変異の違いに着目した胆道癌発癌メカニズムの解明
Project/Area Number |
22K15528
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西川 義浩 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(PD) (80802785)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 胆道癌 / ELF3 |
Outline of Annual Research Achievements |
胆道癌の予後不良な難治癌の一つであり、病態解明と新規治療法の開発が急務である。胆道癌の発生部位により遺伝子変異プロファイルが異なることが明らかにされているが、個々の遺伝子変異の胆道癌における役割は明らかとなっていない。 ELF3 (E74 Like ETS transcription Factor 3)はETSファミリーに属する転写因子である。近年各種癌における発現の異常が報告、注目されており(Sizemore GM et al. Nat Rev Cancer. 2017)、胆道癌に関しては、特に胆嚢癌において、ELF3遺伝子のloss-of-function変異がTP53遺伝子に次いで2番目に高い頻度で認めることが近年報告され、胆道癌形成において癌抑制遺伝子として機能していることが強く示唆されている(Pandey A et al. Nat Commun. 2020)。 そこで本研究では、胆道癌の発生部位の違いによる発癌メカニズムの違いの解明と、また胆嚢癌において高率に遺伝子変異を認めるELF3遺伝子がどのように発癌に関与するかの解明と、さらにELF3が胆道癌の治療標的となり得るかを明らかにすることを目的とした。 令和4年度は、(1)胆道癌においてELF3がどのような役割を果たしているかを、胆道癌マウスモデル・Elf3 conditionalノックアウトマウス・Elf3 overexpressionマウスを用いて検討する、(2)胆道癌の発生部位と発癌メカニズムの違い、およびElf3の関与に関して、上記マウスよりオルガノイドを作成し、網羅的な解析を行うことを目標とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、胆道癌の発生部位の違いによる発癌メカニズムの違いと、またELF3遺伝子がどのように関与するかの解明を試みるために、下記の検討を行った。 (1)胆道癌マウスモデルを用いた発癌メカニズムの解明:胆道癌マウスモデルを作成し、さらにElf3 conditionalノックアウトマウス・Elf3 overexpressionマウスを掛け合わせた。Elf3 overexpressionマウスは過剰発現が想定通りいかなかったために解析が行えなかったものの、Elf3 conditionalノックアウトマウスでは、胆嚢においてのみノックアウト群で腫瘍形成の促進が認められた。すなわちElf3が特に胆嚢において腫瘍形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 (2)オルガノイドを用いた胆道癌形成におけるElf3の役割の解明:上記胆道癌マウスモデルのElf3野生型とノックアウトのそれぞれから胆嚢・胆管のオルガノイドを作成し、RNAシーケンスによる網羅的な解析を行った。その結果、Elf3ノックアウトの胆嚢においてERBBやmTOR pathwayの亢進を認めた。すなわちマウスモデルの結果と合わせ、Elf3が胆嚢においてはERBBやmTOR pathwayを抑制することで、腫瘍抑制性に働いている可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、上記のマウス胆道腫瘍オルガノイドの解析を進め、①転写因子であるElf3の直接の標的遺伝子の同定し、その詳細なメカニズムの解明を図る。さらに②ELF3の有無が薬剤感受性に関与するか、すなわち胆道癌の治療薬選択に影響しうるか検討することを目標とする。
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Causes of Carryover |
当初の予定していたより物品費に若干の余裕が生まれたため、次年度に繰り越し、物品費として使用する予定としている。
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