2022 Fiscal Year Research-status Report
微小環境に応答するPolycomb群依存的ながん幹細胞性質の獲得メカニズムの解明
Project/Area Number |
22K15533
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
原地 美緒 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 特別研究員 (60905553)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脳腫瘍 / エピジェネティクス / Polycomb群 / EGFR / 幹細胞性質 / 微小環境 / 治療抵抗性 / 幹細胞ニッチ |
Outline of Annual Research Achievements |
最悪性度の脳腫瘍である神経膠芽腫(グリオブラストーマ)は、当初は治療効果が見られる抗がん剤や放射線などの標準治療に対して急速に治療抵抗を示すことが知られており、これが完治の大きな障壁となっている。その主な一因として“がん幹細胞”と呼ばれる治療抵抗を持つ細胞集団が腫瘍内に残ることが再発の原因となっていると考えられている。DNA配列に変異が見つからないにも関わらず幹細胞的な性質をもった集団が現れることから、申請者は、この幹細胞性質はエピジェネティクス因子Polycomb群によって引き起こされているのではないかと考え、本研究に着手した。 具体的には、Polycomb群の動体解析を主軸とした、培養系での網羅的なエピゲノム解析と、脳腫瘍マウスを用いた個体や組織レベルでの評価を行うことを本研究課題に設定した。本研究は2年を予定しており、今年度の結果として、治療抵抗性獲得モデル(ニューロスフェア形成実験)の実験条件の精査をした上で、シングルセルトランスクリプトームや一通りのChIPやATACseqにおけるデータ取得を行った。その結果として、幹細胞性質を獲得するにあたり原因となる遺伝子群の同定を行った。 今後はこの遺伝子群や、その上流の制御因子となるPolycomb群に対する変異細胞をクリスパーコンストラクトを用いて作製し、培養細胞や脳腫瘍モデルマウスを用いた表現型の評価を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Sphere形成を微小環境下における腫瘍幹細胞の誘導モデル、および、治療抵抗性獲得モデルと見立て、Sphere形成における時系列での細胞形質の変化に伴う解析を行なった。今年度はまずはSphere形成実験での条件検討を精査し、不均一性を考慮した上で、シングルセルをベースとした手法を採択した。 具体的には、Polycomb群の動態を中心とした、次世代シーケンサーを用いた網羅的なエピゲノム解析を行なった。その上で、時系列変化に伴いSphere形成の原因となっている責任遺伝子群、および責任ゲノム領域を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は同定した責任遺伝子領域の変異細胞を作成し、表現型を細胞および脳腫瘍モデルマウスで評価する。具体的には、CRISPRなどによるノックインの作成を行なっている。 またPolycombに関するコンディショナルノックアウトのためのコンストラクトは既に作っており、それらを用いてU87など腫瘍細胞のコンディショナル変異細胞株を作成している。今後はこれらを用いて表現型を確認する予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度で、おおよそ100万弱の次年度使用額が生じた。 理由としては、シングルセルトランスクリプトームやChIPseqなどのクロマチン解析における、バイオインフォマティクス解析をするにあたり、解析サーバーの購入である。2022年度は解析サーバー購入の経費としておおよそ100万ほど計上していたが、ロシア情勢による輸入規制や、半導体不足、さらに円安による海外製品の高騰につき、購入予定のサーバーを2023年度に持ち越すこととなった。
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