2022 Fiscal Year Research-status Report
多核巨細胞形成型腫瘍溶解性HSVが誘導する細胞死に関与する細胞死メカニズムの同定
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22K15553
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 拓真 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (90867938)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | がん / 遺伝子治療 / 腫瘍溶解性ウイルス療法 / ヘルペスウイルス / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
単純ヘルペスウイルスでがんを治療する腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(oHSV)の有効性を増強する方法のひとつとしてoHSVを多核巨細胞形成型に改変する方法が有望視されているものの、実用化には至っていない。私たちの最近の研究により、多核巨細胞形成に正常細胞を巻き込んだ際に細胞死が速やかに誘導されることが見出され、多核巨細胞形成に正常細胞が巻き込まれてしまうことが、多核巨細胞形成型oHSVの感染拡大が停滞してしまう要因となりうることが明らかとなった。この問題を克服することができれば、より高い感染拡大能を有するoHSVの開発が可能となりうることから、本研究では正常細胞とがん細胞が共存する環境において多核巨細胞形成型oHSVが誘導する細胞死の特性を解析することにより、関与する細胞死メカニズムの同定を試みた。まずはじめに、複数のがん細胞株および正常細胞由来株を用いることにより、正常細胞とがん細胞が共存する環境において生じる多核巨細胞形成死が特定の細胞株を用いた場合に生じるものではないことを確認した。ウイルス感染による多核巨細胞形成の発生から細胞死が生じるまでの形態をタイムラプス撮影にて観察することにより、ある特定の細胞死の特徴を呈していることが示唆された。この細胞死を制御することが報告されている分子について、がん細胞株あるいは正常細胞由来株における発現を確認したところ、多核巨細胞死が誘導されやすい細胞においてはその分子が比較的高発現しており、がん細胞株においてはほとんど発現していないことが明らかとなった。この分子の多核巨細胞死への関与をさらに詳細に検討するために、高発現細胞から遺伝子をクローニングし、強制発現株の作成を試みたところ、正常細胞由来株と同程度の発現量を示す細胞株の樹立に成功した。この細胞株を用いることにより、多核巨細胞死に関与する細胞死メカニズムについて引き続き検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正常細胞とがん細胞が共存する環境下において多核巨細胞形成型oHSVが誘導する細胞死に関与する可能性が高い細胞死メカニズムを少なくとも1種類見出し、その制御を司ることが報告されている分子の関与についても示唆が得ることができため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた結果を踏まえ、データの整理ならびに分析を行い、その学術的意義を文献検索などを通じて慎重に考察した上で、学術論文の執筆に着手する。その過程で、抽出された課題などに対する実験計画を立てる。さらに次のステップとして、正常細胞とがん細胞が共存する環境下における多核巨細胞形成型oHSVが引き起こす多核巨細胞死に関与する可能性が高いと考えられた細胞死メカニズムについて、より詳細な分子メカニズムを解析することにより、関与を特定し、それ以外の細胞死メカニズムについても、多核巨細胞死に関与しているか否か引き続き解析を進める。 上記の検討で特定された細胞死メカニズムについて、in vivoにおける多核巨細胞死にも関与しているか否か確認する。
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Causes of Carryover |
想定していた旅費が必要無くなったことにより次年度使用額が生じた。この次年度使用額については2023年度の旅費として使用する計画とする。
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