2022 Fiscal Year Research-status Report
化合物スクリーニングによる小児肝芽腫に対する新規治療候補薬の機能解析
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22K15554
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
水野 裕貴 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 助教 (60771376)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 肝芽腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児固形がんの一種である肝芽腫に対する新規治療候補薬の選出および機能解析のために、肝芽腫の細胞株HepG2に対して、100種類のランダムな治療候補化合物ライブラリーを用いた薬剤投与スクリーニングにより、最も効果が高く、既存の報告がない薬剤として、TanespimycinとNMS-E973を選出した。この二剤はともに分子シャベロンであるHSP90の阻害剤であり、特にTanespimycinは様々の小児固形がんの患者に対する第一相試験が米国で行われ、肝芽腫に対する効果も期待できる有望な薬剤である。 肝芽腫細胞株HepG2とHuh6それぞれにおいて、WST8AssayによりTanesipimycinが濃度依存的、時間依存的に増殖抑制効果を示すことを確認した。また、それぞれの細胞株において、TanespimycinがDNAダメージとアポトーシスを誘導することで抗腫瘍効果を発揮することをウエスタンブロットで確認した。 HSP90阻害薬は、癌増殖に必要なRAFやAKT、HER2といったタンパクの発現を低下させることが他の癌腫で報告されている。肝芽腫の細胞株にTanespimycinを投与してp-Akt、cRaf、HER2の発現をウエスタンブロットで評価したところ、これらの発現が著明に投与前と比較して低下・消失することが確認された。肝芽腫細胞株において、Tanespimycinはこれらの腫瘍増殖に必要なタンパクの発現維持を阻害することにより、抗腫瘍効果を発揮することが示唆された。 また、フローサイトメトリーによる細胞周期解析で、Tanespicyminが肝芽腫細胞株HepG2、Huh6両者に対して時間依存的にG2期細胞が増加することが確認され、TanespimycinがG2arrestを誘導して腫瘍増殖抑制効果を示していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画時点での予定通り、in vitroでのTanespimycinの肝芽腫における機能解析を進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、肝芽腫マウス皮下移植モデルを用いたin vivoでのTanespimycin投与実験および、siRNAを用いたHSP90のノックダウンによる機能解析、および肝芽腫臨床検体を用いたHSP90の腫瘍部の発現の評価を行う予定である。 また、Tanespimycinと、肝芽腫の標準治療薬であるシスプラチンとの併用による上乗せ効果の解析も行い、ここまでの内容で一度論文報告する方針である。 さらに、シスプラチンとの併用による、100種類の新規治療候補薬ライブラリーを用いてのスクリーニングによる、多剤併用化学療法に有望な薬剤の選出およびその機能解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
実験が順調に進んだため、HSP90のノックダウンに必要なsiRNAを購入するために次年度使用額が発生した。
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