2022 Fiscal Year Research-status Report
癌微小環境内の細胞プロファイルを反映する新規バイオマーカーの探索
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22K15567
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
内藤 寛 日本医科大学, 医学部, 助教 (70738210)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | がん / バイオマーカー / がん微小環境 / がん関連線維芽細胞 / 細胞外小胞顆粒 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は研究計画に則り、以下の通り研究を実施した。 1) 共培養環境下におけるEV追跡系の構築:CD63タンパク質の細胞外ドメインである2つのループ構造のうち、smallループ内に、改変型GFPであるAchilles(以下achGFP)を融合させた。この融合タンパク質CD63achGFPを、CRISPR-Cas9システムによりHCT116大腸がん細胞株のAAVS1領域に導入した。次に、このCD63acGFPを発現するHCT116(HCT116-CD63achGFP)から分泌されるEVが、ExoCounterシステムを用いて検出可能かどうか検討した。その結果、抗GFP抗体、抗CD63抗体、および抗CD9抗体を組み合わせたExoCounterにより、achGFP陽性のEVフラクションが検出可能であることが分かった。全EV中のCD63とCD9の比率についてもExoCounterにより検討したところ、コントロール細胞と比較して、CD63陽性のEV数はHCT116-CD63achGFP細胞株で増加が見られたが、CD9についてはほとんど変化がなかった。このことから、EV表面のCD63achGFPが増加したことが示唆された。現在、achGFP以外の蛍光タンパク質を用いた系や、肺がんや胃がんの細胞株、線維芽細胞で同様の系が構築可能かどうか検討を進めている。また、抗GFP抗体を用いたCD63achGFP 陽性EVの精製についても進めている。 2) 癌細胞と間質の線維芽細胞の共培養過程で分泌されるEVの追跡および解析: HCT116-CD63achGFP細胞株と、ヒト胎児線維芽細胞株であるMCR5を共培養し、顕微鏡下で観察したところ、一部緑色蛍光が、MCR5表面上に集積する像が見られた。このことから、HCT116細胞由来のCD63-acGFP陽性EVが線維芽細胞へ受け渡された可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CD63achGFPの構築は、本研究計画が始まる時点でほぼ構築を終えている予定であったが、最初に構築したCD63achGFPでは、CD63細胞外ドメインの別のループ構造に予期しない変異が含まれていたことが原因でうまく機能しなかった。そのため、想定以上にEV検出系の構築に時間を要したため、当初の予定であったがん細胞と線維芽細胞の共培養時におけるEV内部変化の解析まで行えなかった。次年度の初めにこの解析まで進め、年内には共培養時に特異的な候補分子の絞り込み、機能解析まで着手する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、achGFP以外の蛍光タンパク質であるdsRedなどの蛍光タンパク質を用いたベクター、肺がんや胃がんの細胞株、線維芽細胞でも同様の系が構築可能かどうか検討を進めている。実際に、すでに一部肺がん細胞株には導入済みで、現在細胞の薬物スクリーニングを開始している。HCT116はEVをよく産生するコントロール細胞としてよく利用されていることから使用していたが、肺がん、胃がんの細胞にも引き続き展開する。さらに、緑色蛍光以外の分子によるイメージング、またはそれらを対象としたEVの精製についても検討をすすめる。一方、最優先の項目としては、線維芽細胞などの間質の細胞との共培養によって変化するEV内部分子の検出であるため、これに先立ち、抗GFP抗体を用いたCD63achGFP 陽性EVの精製について既に条件検討を開始した。EV内部分子の検査項目はトランスクリプトームおよびプロテオームであるが、最終的なExoCounterによるEVバイオマーカー検出の実現性も鑑みた場合、プロテオーム解析を優先して行う予定である。
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Causes of Carryover |
CD63achGFPの構築は、本研究計画が始まる時点でほぼ構築を終えている予定であったが、最初に構築したCD63achGFPでは、CD63細胞外ドメインの別のループ構造に予期しない変異が含まれていたことが原因でうまく機能しなかった。そのため、想定以上にEV検出系の構築に時間を要したため、当初の予定であったがん細胞と線維芽細胞の共培養時におけるEV内部変化の解析まで行えなかった。次年度使用額が生じた理由としては、本来行うはずであったオミックス解析費用を次年度に繰り越さざるを得なかったためである。次年度初めに、オミックス解析受託費用として使用する予定である。
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