2022 Fiscal Year Research-status Report
MUC1修飾糖鎖における構造解析と唾液腺腫瘍の診断マーカーとしての役割
Project/Area Number |
22K15591
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
杉浦 貴則 東京歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (10906366)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 粘表皮癌 / 糖鎖 / ムチン / 電池泳動 / 分子マトリックス電気泳動 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京歯科大学市川総合病院歯科・口腔外科及び口腔がんセンターにて切除した粘表皮癌3例と正常唾液腺7例を対象とした。構造解析は,凍結組織よりムチンを抽出し,分子マトリックス電気泳動(SMME)により分離,各種レクチンによるレクチンブロットにて泳動膜の染色を行った。また,局在解析は粘表皮癌3例のホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いて腫瘍組織と周囲の正常唾液腺組織とを比較した。そして免疫組織化学染色(IHC)によるMUC1,sialyl TnおよびIn situ hybridization(ISH)によるC2GnT-1の発現を評価した。 SMMEレクチンブロットでは,α2-3シアル酸認識レクチン(MAL-II)にて粘表皮癌全例のムチンバンドが染色された。一方,正常唾液腺ではシアル酸認識レクチンにおいても染色されるムチンバンドはないことが確認された。 IHCの結果では,粘表皮癌全例において腫瘍組織内にMUC1の陽性を認めた。さらにC2GnT-1のISHにおいても粘表皮癌全例において陽性を認めた。また,粘表皮癌のC2GnT-1陽性部とMUC1陽性部は一致しており,粘表皮癌由来のMUC1がC2GnT-1によりコア2 O-型糖鎖による修飾をうけていることが示唆された。これに対し,粘表皮癌周囲の正常唾液腺組織ではMUC1は導管での2/3例に陽性であり,C2GnT-1のISHでは導管,粘液産生細胞,漿液産生細胞ともに陰性であった。 以上より,α2-3シアル酸を含むコア2 O-型糖鎖に修飾されたMUC1は粘表皮癌の粘液産生細胞および非粘液産生細胞に発現されていることが示唆された。このことからこの糖鎖を有するMUC1は粘表皮癌の新たな診断における候補マーカーになり得る可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共同研究者である国立研究開発法人機構産業技術総合研究所の協力もあり、質量分析およびタンデム質量分析により腫瘍特異的な糖鎖を明らかにした。また、病理組織学的解析により局所評価が実施できたことから概ね順調に進んでいる。しかし、希少な疾患のため、細胞培養株の樹立ふくめ、検体数の確保を検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はレクチンブロットによって示された糖鎖の合成や高速液体クロマトグラフィー、質量分析を用いてた同定を検討している。 またホルマリン固定パラフィン包埋検体を用いたムチン抽出・解析実験を行っていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
科研費交付前に購入した器材、物品を使用したため、次年度使用額が生じた。 2023年度はすでに1篇の原著論文の投稿を行っている。また、免疫組織化学染色、ムチン抽出法の検討など実験を行う予定である。
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