2022 Fiscal Year Research-status Report
膵癌特異的代謝の解明と術中リアルタイムイメージングへの応用
Project/Area Number |
22K15595
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Research Institution | Shizuoka Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
久保 秀正 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (60847226)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 膵癌 / 膵腫瘍 / 酵素 / 代謝 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は最も予後不良な癌の一つであり、遠隔転移を伴う症例に不要な手術を避け早期に化学療法を行うことや、癌遺残のない切除を行うために、術中の正確で迅速な診断が求められている。近年開発されたactivatable型酵素活性検出蛍光プローブは、癌特異的に発現する酵素の活性を利用して、その場で局所に噴霧するだけで迅速に癌特異的な蛍光イメージングを可能とする。本研究の目的は、当院で行っているマルチオミクス解析結果をもとに、膵癌特異的に発現する標的酵素を明らかにし、同酵素を検出可能な蛍光プローブを探索または開発し膵癌の術中リアルタイムイメージングの実現を目指すことである。 当該年度では、前段階の検討として、膵癌患者の腹腔洗浄細胞診において通常のPapanicolaou染色による術中迅速診断と、その後追加で行う免疫細胞化学染色において膵癌細胞をより精度高く検出可能かどうかの検討を行った。その結果、Ber-EP4およびCEA抗原に対する免疫染色で、通常のPapanicolaou染色による術中迅速診断で偽陰性と判断される癌細胞が検出可能であることを明らかにし、既存の手法での検出限界を示した。次に、さらなる前段階の検討として、マルチオミクス解析結果から膵神経内分泌腫瘍における特異的酵素の探索を行った。まず蛍光プローブに応用できる可能性がある酵素を、遺伝子発現データから873種類を選択した。腫瘍部および正常部の比(T/N比)を算出して、873種類の候補酵素からT/N比の高い酵素の遺伝子をピックアップした。このうち、B3GAT1遺伝子はT/N比25.1と腫瘍部で強く高発現していることが明らかとなり、また同遺伝子高発現の患者は再発リスクが高いことが示唆された。この結果は、術中リアルタイムイメージングの実現のための重要な結果である。同酵素の蛋白質レベルでの発現や、酵素活性検出蛍光プローブへ応用可能かどうかを今後、検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵癌患者の腹腔洗浄細胞診の検討から、既存の検査方法での検出限界があることを示した。さらにマルチオミクス解析データから蛍光プローブに応用できる可能性がある酵素を、遺伝子発現データから873種類選択し、前段階の検討として、膵神経内分泌腫瘍の酵素遺伝子発現について解析したところ、標的酵素として有望な可能性のある酵素を同定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
標的酵素として有望な可能性のある酵素について、蛋白質レベルでの発現や、酵素活性検出蛍光プローブへ応用可能かどうかを今後、検討していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため学会へ現地参加せずオンライン参加したこと、および研究進捗が若干遅れたため予定通りの費用を使用しなかった。 標的酵素のタンパク発現解析や、研究成果の発表のための費用として使用する。
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Research Products
(2 results)