2022 Fiscal Year Research-status Report
骨髄不全症における標的オトリ人工抗体開発に向けたネオエピトープ反応性T細胞の検出
Project/Area Number |
22K15599
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
野上 彩子 東京医科歯科大学, 医歯学総合研究科, 助教 (30754890)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 骨髄不全 / 血球減少 / 再生不良性貧血 / 発作性夜間ヘモグロビン尿症 / 自己反応性T細胞 / ネオエピトープ |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄不全症は、T細胞集団のごく一部の変化が原因と思われるが、細胞集団を対象とした網羅的解析では原因分子の特定に至っていない。また、CAR-T療法後にも二次性の骨髄不全症が認められ、原因分子やその検査法は臨床的なアンメットニーズである。本年度は、CAR-T療法を施行後の血球減少から解析に着手した。同意を得た患者から経時的に採取した末梢血検体からPBMCおよび血清を採取当日に分離し解析に供した。解析に先立ち、試験系の陽性対象細胞としてCD19CAR陽性の株化細胞(CD19CAR-Jurkat細胞)を用いた。CD19CAR-Jurkat細胞は、当研究室で樹立された。各細胞分画の細胞表面および細胞内タンパクをCAR-T細胞とともに解析する目的で、CAR-T細胞の検出系を確立した。マルチカラーフローサイトメトリーではCD3/CD4/CD45RA/CD278(PD-1)/FMC63/CD196(CCR6)/CD127/CD25を同時検出し、Th1, Th2, Tm, Tn, Treg, Th17, PD-1陽性T細胞, CAR-T細胞を解析した。またCD8, CD196, KLRG1, CD56, IL-17, CD4を同時検出した。さらに、血清検体を用いてタンパクArrayを行い、ImageJ(NIH)を用いて画像解析した。2020年~2022年まで当院血液内科でCAR-T療法を施行された患者26名を対象とした後方視的解析では、1ヶ月または3ヶ月遷延する血球減少は、解析可能な者のうち各々85%および92.3%に認めた。遷延する血球減少の内訳はNeu減少61.5%、Hb減少84.6%、PLT減少53.8% であった。血球減少症例では末梢血中CAR-T細胞のexpansion以降にCD45RA-/CD196+細胞、CD159a+/CD56+細胞の比率および絶対数の上昇を認めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CRS期に上昇したサイトカインには、自己反応性細胞の動員を司るサイトカインが含まれ、実際に自己反応性細胞の誘導が観察された。さらに、これらの結果に加えて、実際の骨髄不全症の患者から同意を得て検体を提供して頂き、ネオエピトープ推定に必要なWES, RNAseqデータの解析までを終え、複数の骨髄不全状態に対して多方面にわたる解析データを入手することができた。想定よりも多くの情報を得ており、本研究助成金により専門的な受託解析に切り替えた成果であると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は症例の臨床経過と並行してこれらのマーカーを酵素結合免疫吸着測定法或いは化学発光酵素免疫測定法で測定し、疾患活動性の指標や予後を予測する層別化マーカーとなるか否かを検討する。症例により自己反応性を有するT細胞がごく僅かである場合、個体差と疾患特異性の識別が困難である可能性や機能分子が個人により多様性がある可能性が考えられることから、他の骨髄不全症との差異を比較しながらNGSによるより詳細な遺伝子解析を計画している。本研究で明らかになる自己反応性機能分子とその迅速検査法の開発は、単に一つの病態の原因究明が可能となるばかりではなく、腫瘍性、非腫瘍性の垣根を超え免疫分子の検出系を臨床検査までの応用を視野に入れて確立し、臨床的アンメットニーズに応えるものである。
|