2023 Fiscal Year Research-status Report
アデノシン2a受容体を標的とした新規直腸癌術前治療法の開発
Project/Area Number |
22K15606
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
澤田 隆一郎 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (60912160)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 直腸癌 / 術前放射線化学療法 / 腫瘍免疫微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
局所進行直腸癌の局所制御のための術前化学放射線療法単独の奏効率は限られているため、本研究は免疫抑制に働くアデノシン2a受容体(A2aR)に対する拮抗薬を使用した 直腸癌術前治療における新規治療の開発を目的とし、アデノシン経路が腫瘍免疫微小環境での役割を持つことに着目して研究を進めた。ヒト直腸癌術前化学放射線療法におけるA2AR、CD73の臨床的重要性を明らかにするために、ヒト直腸癌化学放射線療法施行症例70例の生検及び手術標本を用いて分子発現を調査した。分子発現の解析のために我々はDeep Learningによる画像解析を試み、独自アルゴリズムを持つCu-cytoの開発に取り組んだ。 Cu-cytoの開発に際しては、免疫組織化学染色を施した腫瘍組織スライド画像を用いてその性能を評価し、学習の初期段階では、免疫染色CD8+T細胞のF値(0.343)は、非免疫染色細胞(腺がん細胞(0.040)およびリンパ球(0.002))のF値よりも高かったのに対し、学習が進むにつれて、すべての細胞のF値が向上することを示し、この成果を報告した。 また、直腸癌の免疫微小環境のさらなる解明のために免疫組織学的解析を用いて、大腸癌の腫瘍形成に重要であることが知られているWnt/β-cateninシグナルについて検討を行った。その結果、核内β-catenin高発現群で低発現群よりも病勢の進行と、血管浸潤陽性率が高く、術前放射線療法への反応性の定価と関与していることを示した。 今後はこれら免疫微小環境の研究を臨床成果に還元させることを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
直腸癌術前化学放射線療法の症例の集積を行い、研究実績の項での腫瘍免疫微小環境についての研究を行った。また、ヒト直腸癌術前化学放射線療法におけるアデノシン経路に関与するA2AR、CD73の臨床的重要性を明らかにすることを目的に、ヒト直腸癌の化学放射線療法施行症例の生検及び手術標本を用いて免疫染色を行い分子発現の解析を試みている。分子発現の解析に際しては、研究実績の概要に記した新規アルゴリズムのCu-cytoの開発に時間を要した。また、同時に直腸癌の術前治療に関与する臨床因子の解析も進めており、modified Glasgow prognostic scoreとの予後との関与、鼠径リンパ節転移を伴う症例での術前両方の有効性などを報告しており、今後も免疫微小環境の解明による臨床成果への還元に努める。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫組織学的解析を行った後は、直腸癌の放射線化学療法に関する臨床的因子の検討も並行して行い、相関性を検証する。放射線化学療法の微小環境への影響は、放射線処理した大腸癌細胞株のADO濃度、A2AR、CD73のmRNA発現レベルの変化や、マウスモデルを用いた、局所放射線治療前後のADOの腫瘍濃度、A2aR、CD73発現の経時的変化の検証によって、期待されるA2aR拮抗薬の放射線治療への相乗効果の可能性を探る。
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Causes of Carryover |
実験用品に関する物品の納入が遅れたため。
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