2023 Fiscal Year Research-status Report
Predicting the effect of graft-versus-leukemia (GVL) effect for refractory hematological malignancy
Project/Area Number |
22K15615
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Hospital Organization Tokyo Metropolitan Komagome Hospital |
Principal Investigator |
名島 悠峰 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立駒込病院(臨床研究室), 血液内科, 医長 (80750471)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | HLA / 白血病 / HLA不一致同種移植 / ハプロ移植 / 非血縁者間同種 |
Outline of Annual Research Achievements |
造血器腫瘍の移植医療、特にハプロ移植やHLA不一致非血縁者間移植、臍帯血移植などにおいては、いかにGVHDを抑えるかに加え、いかにGVL効果を最大化するかが、臨床上の「課題」であり「重要な挑戦」である。本研究では、HLA遺伝子の解析を通じ、ドナー選定に活用できるGVL効果の予測法を開発し、さらにその結果を速やかに臨床医へ返却するシステムを構築することを目的とする。2022年度は、当初計画の通り本年度の当初計画は、コピー数測定用のマイクロアレイ(array CGH)をカスタム設計し、これを用いて、実際の患者検体を用いてHLA遺伝子座の存在する6番染色体短腕の染色体構造異常(コピー数異常と後天性UPD/コピーニュートラルLOH, cnLOH)の検出を実現することであったした。6番染色体短腕のHLA領域5Mbpについて、比較ゲノムハイブリダーゼーションアレイ(array CGH; aCGH)をカスタム設計した。Agilent社aCGHではSNPプローブもスポットでき、aCGHとSNP解析を同時に実施可能である(aCGH/SNP)。ハプロ移植HLA不一致移植後の再発症例毎に診断時・移植後再発時の骨髄穿刺吸引試料ペア(n=24、検体数48)からそれぞれ核酸を抽出し、移植前後のaCGHペアデータ解析を実施し、アレイデータは概ね良好に取得された。得られたデータ解析から、一部の症例でコピー数異常、後天性UPD/コピーニュートラルLOHに一致する検体が見出された。2023年度は、HLA1座ミスマッチの非血縁者間骨髄移植後再発の際にcnLOHを認め、白血病芽球がドナー免疫からエスケープしているために救援療法として実施したドナーリンパ球輸注が無効であった一症例についてデータと臨床経過をまとめて、2024年3月の第46回造血・免疫細胞療法学会にて口演発表(O32-3)を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度に6番染色体短腕のHLA領域5Mbpとその他の染色体領域について、比較ゲノムハイブリダーゼーションアレイ(array CGH; aCGH)をカスタム設計し、HLA領域では市販アレイの5~10倍のプローブを設定した。Agilent社aCGHではSNPプローブもスポットでき、コピー数変化とSNP解析を同時に実施可能である(aCGH/SNP)。実際の患者検体を用いてHLA遺伝子座の存在する6番染色体短腕の染色体構造異常(コピー数異常と後天性UPD/コピーニュートラルLOH, cnLOH)の検出した。移植後の再発症例毎に診断時・移植後再発時の骨髄穿刺吸引試料ペア(n=24、検体数48)から核酸を抽出し、移植前後のaCGHペアデータ解析を実施し、一部の症例でコピー数異常、cnLOHに一致する検体が見出された。2023年度には、これらの一部について、全エクソン解析によって検証を試み、当該領域のコピー数異常とアレル頻度の不均衡が確認された。HLA1座ミスマッチの非血縁者間骨髄移植後再発時にcnLOHを認め、白血病芽球がドナー免疫から逃避したため救援療法のドナーリンパ球輸注が無効であった一症例について、全エクソン解析によるcnLOHの検証を行い、診断時、移植前の第一再発期、移植後後寛解に至った後の第2再発期における白血病細胞のクローン進化の過程をターゲットシーケンシング解析により同定し、治療抵抗性の臨床経過を説明しうる病因を突き止めた。この成果を2024年3月第46回造血・免疫細胞療法学会にて発表した(口演O32-3で採択)。同様にNGSを用いた移植後再発症例のクローン進化の評価、英文論文校正費用・投稿費用などに当該科研費を用いた研究について、後述のように2023年度は3報の論文化(英文2報、和文1報)と2報の国際学会発表(米国血液学会)、3報の国内学会発表を実施できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
白血病による免疫逃避の有無の判断のためHLA-loss遺伝子検査の臨床実装を検討する過程で下記問題点が挙がってきた。1.体細胞変異検出は、院内の小型NGS機器と専門家により実臨床に生かす標的領域のクリニカルシーケンシングが実装されている。しかし、HLA-loss検査のための移植後再発症例検体では、患者とドナー由来の4種類の胚細胞系列の混在する検体からHLAアリルの区別を行う必要があり技術的ハードルが高いこと、2.HLA-lossを含む染色体コピー数異常を判定するための全エクソン解析や全ゲノム解析は、大型NGS機器を要するため院内では実施困難で、外部委託解析では1-2ヶ月を要すること、3.cnLOHの判定にはコピー数の正確な推定が必要だが、腫瘍細胞含有率が低い検体の場合にその精度は低くなること、4. aCGH/SNP法では多くのDNA量を要すること、などである。一方で、体細胞変異検出目的のクリニカルシーケンシングの解析データから染色体コピー数異常を判定する手法が確立され、同データからHLA-lossもある程度スクリーニング可能となりつつある。今後はHLA領域のターゲットシークエンス解析を主軸に置き、HLA遺伝子解析のためのバイオインフォマティクスの開発や他研究者の研究進展にも配意しながら症例数を増やし、臨床実装に向け検体提出から解析結果確認までのスピードを意識しながら進める。また免疫・細胞療法学会の発表で反響を得た症例報告、およびこれまで見出されたHLA-loss全例の解析結果につき論文草稿作成中である。当該研究費により、研究代表者が筆頭または責任著者として発表した査読論文は2022-2023年度で合計4報(英文3報)で、2024年5月にさらに英文1報が受理されている。最終年度終了時点で当該研究費の成果として5報以上の査読英文論文発表、を達成可能な目標と設定し尽力する。
|
Causes of Carryover |
研究協力者らによってカスタムマイクロアレイデザインと作製が実現し、本研究費からの支出とならなかったために、残る予算について次年度使用となった。次年度以降、執行可能な研究費については、核酸抽出キット、次世代シークエンスの実施、計算機やデータ保存サーバー等の導入・修理、論文投稿、学会出張などの費用に充てることとし、適切に執行してゆく。
|