2022 Fiscal Year Research-status Report
分子モーターKIF1Bβ変異による神経変性疾患の発症機構
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22K15636
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 真夏 (森川真夏) 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (80854885)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | キネシン分子モーター / 神経変性疾患 / シャルコー・マリー・トゥース病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、軸索型シャルコー・マリー・トゥース病(CMT2)患者において新たにみつかった、分子モーターKIF1BβのIGF1R結合ドメインの希少な一塩基変異に注目している。このKIF1Bβ変異がKIF1Bβ-IGF1R-PI3Kカスケードに与える影響を調べることで、CMT2発症の一因を探ることが目的である。 昨年度は、マウス海馬初代培養ニューロンを用いて、KIF1Bβ変異体の発現とニューロンの生存・軸索伸長の関連を検証した。KIF1Bノックアウトマウスの海馬初代培養ニューロンはDIV2-3で軸索伸長が著しく損なわれることが知られている (Zhao et al., 2001, Cell; Xu et al., 2018, JCB)。そこでKIF1BノックアウトマウスにEGFP-KIF1B発現ベクターを導入し、軸索伸長のレスキュー実験を試みた。 まず最初に、様々なトランスフェクション法を試したところ、レンチウイルスベクターでKIF1B発現効率が高いことがわかった。この方法でKIF1Bノックアウトマウスの海馬初代培養ニューロンにEGFP-KIF1BαおよびEGFP-KIF1Bβを発現させたのち、免疫細胞化学的に染色し、コンフォーカル顕微鏡で軸索長と分枝数を分析することでニューロンの形態を観察した。 その結果、KIF1Bノックアウトニューロンは以前の報告通り全ての突起が短いのに対して、EGFP-KIF1BαとEGFP-KIF1Bβを発現させると軸索が有意に長く伸びることが確認された。一方、EGFP-KIF1Bαのみを発現させ、KIF1Bβがないニューロンでは有意に突起が短かった。そして、EGFP-KIF1BαとEGFP-変異型KIF1Bβを発現させた場合も軸索が有意に短くなることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年10月より産休・育休を取得しているため、進捗は当初の予定よりはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度行うことを予定していたが行えなかった実験のひとつは、KIF1Bβノックダウンニューロンにおける変異型KIF1Bβの発現が軸索伸長をレスキューするかどうかを調べるものである。しかし変異型KIF1Bβとニューロンの軸索伸長の関連性は上述したノックアウト実験によりすでに検証できたため、育休後の2023年度には以下の実験(1)を遂行する予定である。また、もし余裕があれば当初2023年度と2024年度に行うことを予定していた実験(2)と(3)を行う。 (1)KIF1Bβ変異とIGF1R輸送を検証する。抗IGF1R抗体を使用した免疫染色で軸索表面のIGF1R発現レベルを分析し、IGF1Rの表面提示に対する変異型KIF1Bβの活性を野生型と比較する。また、同じ系でライブイメージングを行いIGF1Rの輸送をリアルタイムで観察する。輸送されたIGF1R含有小胞の数、順向性・逆向性の輸送方向の比率、速度を分析し、変異型KIF1BβがIGF1Rの軸索輸送へ与える影響を野生型と比較する。 (2)KIF1Bβ変異とIGF1Rの結合能力を検証し、変異の存在によりIGF1Rβサブユニットに対して結合能力が低下するかを評価する。 (3)KIF1Bβ変異とIGF1R-PI3Kシグナル伝達の障害を検証し、変異型KIF1Bβを発現するKIF1BβノックダウンニューロンにおいてIGF1Rを介したPI3Kシグナル伝達が不完全になるのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
産休と育休の取得により、当初行う予定だった実験の一部を来年度に繰り越したため次年度使用額が生じた。
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