2022 Fiscal Year Research-status Report
スプライシング関連タンデムリピートが遺伝性疾患の病態に果たす役割の解明
Project/Area Number |
22K15646
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
浜中 耕平 横浜市立大学, 医学部, 助教 (20801129)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | タンデムリピート / スプライシング / リピート伸長病 / 脊髄小脳変性症 / 量的形質座位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、Genotype-Tissue Expression(GTEx)コンソーシアムが生み出した800人以上のドナーの全ゲノムシーケンシング(whole genome sequencing、WGS)と全身の組織のRNAシーケンシング(RNA-sequencing、RNA-seq)を用いてスプライシング関連タンデムリピートのカタログを作り、リピート伸長病のメカニズムを網羅的に明らかにすることである。昨年度は、49組織にわたってスプライシング関連タンデムリピートのカタログを作製した(11,626個、偽陽性率5%)。スプライシング関連タンデムリピートの中には、1)エクソニックスプライシングエンハンサーを伸長させる、2)エクソンとスプライシングブランチ部位の間の距離を変化させる、3)スプライシング制御因子であるTDP43とRNAの結合を変化させる等のメカニズムを介してスプライシングを変化させていると考えられる例が存在した。また、スプライシング関連タンデムリピートの中に、脊髄小脳変性症6、脊髄小脳変性症12,筋強直性ジストロフィー1という3つのリピート伸長病の原因座位(各々CACNA1A、PPP2R2B、DMPK遺伝子のタンデムリピート)が含まれていた。CACNA1AとPPP2R2Bのリピートについては、GTExプロジェクトの一般集団とリピート伸長病患者を比較した結果、一般集団でも軽度ながら患者と同様のスプライシング変化を起こしていた。これらの結果は、一般集団のデータを用いてリピート伸長病の病理メカニズムを予測することが可能であることを示唆している。本カタログは将来的に様々なリピート伸長病の病態メカニズムの理解に役立つことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
スプライシング関連タンデムリピートのカタログ中に、3つのリピート伸長病の原因座位が存在した(脊髄小脳変性症6、脊髄小脳変性症12,筋強直性ジストロフィー1)。当初はこれらの疾患の罹患組織をRNA-seqすることで、疾患におけるスプライシングの変化を調べる予定であったが、脊髄小脳変性症12と筋強直性ジストロフィー1については公共データベースにこれらの疾患のRNA-seqデータが公開されており、それらのデータの再解析で目的を果たすことができた。また、脊髄小脳変性症6については、患者の剖検脳を手に入れることが出来ずRNA-seq解析を断念し、代わりに脊髄小脳変性症6モデルマウスやヒト患者の剖検脳の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応の実験結果を参照するに留めた。これらの理由から当初の予定が前倒しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように当初の計画以上に先に進んだこともあり、タンデムリピートとスプライシングの関連のみならず遺伝子発現との関連も追加し、上記と同様の解析をする予定である。
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Causes of Carryover |
上記の「現在までの進捗状況」に記した通り、いくつかの実験を省くことになり次年度使用が生じた。上記の「今後の研究の推進方策」に記した通り、タンデムリピートと遺伝子発現との関連もスプライシングと同様に解析することに使用する計画である。
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