2022 Fiscal Year Research-status Report
ヒト血中αシヌクレインの構造特性に基づく疾患鑑別法の開発
Project/Area Number |
22K15650
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
小関 大地 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (10927792)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | αシヌクレイン / シヌクレイノパチー |
Outline of Annual Research Achievements |
パーキンソン病(PD)や多系統萎縮症(MSA)等に代表されるシヌクレイノパチーは根治療法のない神経難病であり、進行を抑制する疾患修飾療法の開発を目指した診断法の開発は我が国の喫緊の課題である。近年シヌクレイノパチーの神経病理において、共通の原因タンパク質とされるαシヌクレイン(αSyn)凝集体がプリオン様の性質を示すことが明らかになってきた。そこで本研究では、プリオン病研究で提唱された「一多型一疾患仮説」をシヌクレイノパチーに拡張し、αSyn凝集体の構造と疾患表現型との関連性を解明することを目的としている。 今年度は、異常タンパク質増幅技術として当教室が開発したRT-QUIC (Real-time quaking-induced conversion)法 (特開2018-159694) を応用することで、PD患者およびMSA患者の血中を循環する微量αSyn凝集体を増幅し、多元的な構造解析を実施した。その結果、各疾患のRT-QuIC産物について電子顕微鏡解析を行ったところ、αSyn凝集体の超微細構造が疾患によって異なることがわかった。また、αSyn凝集体の二次構造解析を行ったところ、円二色性スペクトルの違いを示唆する結果が得られた。興味深いことに、蛍光タグを有するαSynを発現するヒト培養細胞にRT-QuIC産物をトランスフェクションしたところ、αSyn凝集体が細胞内に伝播し、αSynを示す蛍光の形態が疾患によって異なることが明らかになった。そこで、NMR法を用いる患者血液由来αSyn凝集体の立体構造解析を実施すべくスケールアップ条件にてRT-QuIC法を実施したところ、高濃度のリコンビナントαSyn存在下では不均一なRT-QuIC産物を与えると同時に、患者検体中に含まれる疾患特異構造が増幅過程で失われている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NMR法による立体構造解析を実施するにあたって、アイソトープ標識された大量のリコンビナントαSynを用いて患者由来αSyn凝集体を忠実に増幅することは技術的に困難であることがわかった。一方で、適切な条件下でRT-QuIC法を実施すればPD/MSA患者の血液検体から疾患を鑑別できる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の検討により、PD患者およびMSA患者に由来するRT-QuIC産物において、αSyn凝集体の構造にいくつか違いを認めることが明らかになった。この結果から、患者由来のαSyn凝集体はRT-QuIC増幅前の段階においても、構造多型そのものやこれを反映した翻訳後修飾や補因子に関して既に何らかの違いを含んでいる可能性が示唆された。そこで今後の研究の推進方策では新たな取り組みとして、各シヌクレイノパチー患者からαSyn凝集体を精製し、RT-QuIC増幅や伝播を行うことなく直接多型性を確認すると同時に鑑別バイオマーカーの特定を目指す。
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Causes of Carryover |
研究計画の変更に伴い、今年度の未使用額が発生した。次年度以降は高感度分析を実施にあたってウェスタンブロッティングや質量分析にかかる支出予定額の増大が見込まれる。
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