2023 Fiscal Year Research-status Report
GPCR間相互作用に基づくmGluR1のアミロイドβオリゴマー毒性拮抗作用の解明
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22K15653
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
坂入 伯駿 順天堂大学, 医学部, 助教 (20876693)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 異種GPCR間相互作用 / アルツハイマー病 / シナプス毒性 / 代謝型グルタミン酸受容体(mGluR) / GABA-B受容体(GBR) |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病におけるシナプス毒性には、可溶性アミロイドβオリゴマー(Aβo)と正常プリオンタンパク質(PrPC)の複合体が関与する。Aβo-PrPC複合体は、シナプス上の5型代謝型グルタミン酸受容体(mGluR5)と結合してシナプスの消失を引き起こす。一方、1型代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1)は同じAβo-PrPC複合体と結合するにも関わらず、むしろシナプス毒性を抑制すると報告されている。相同性の高いmGluR1とmGluR5でなぜこのような違いがあるのか、そのメカニズムは未解明である。申請者は、mGluR1がGABA-B受容体(GBR)と結合しそのシグナルを弱めることを発見し、またmGluR5はGBRとの結合能をもたないことを見出した。GBRの抑制はアルツハイマー病において記憶障害の改善に作用するという報告を踏まえ、本研究では「mGluR1はGBRとの結合を介したGBRシグナル抑制作用によりシナプス毒性に拮抗する」と仮説を立て、GBRに対する作用の違いからmGluR1とmGluR5のシナプス毒性の違いを明らかにすることを目指している。 前年度に作成したGBR恒常発現mGluR1誘導発現HEK細胞、及びGBR恒常発現mGluR5誘導発現HEK細胞を用いて、本年度は主にmGluR、GBRによって生じる各種細胞内シグナル伝達の解析、及び細胞内局在の解析を進めた。Gq、Giシグナルについては検出に難渋したが双方とも測定に成功した。その結果、GBRのGiシグナルがmGluR1の活性のみならず発現量の影響も受ける可能性を発見した。また、mGluR5のシナプス毒性において重要なFynのリン酸化を検出する系を導入し、解析を進めている。細胞内局在の解析については、蛍光色素による受容体の染色と観察に成功し、引き続いて長時間・高倍率での観察を可能とするため条件の検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Gq、Giシグナルの検出については主に蛍光プローブや蛍光バイオセンサーを用いて測定しているが、前年度に作出したHEK細胞株において従来通りの方法ではシグナル検出に困難があり、当初の計画と比べ遅れを生じた。現在ではプローブの変更、バイオセンサー発現量の調整、各種試薬の調整等によってこれらの問題を解決し、特にGBRのGiシグナルについては先述のような新しい知見を得ている。Fynのリン酸化シグナルの検出は比較的スムーズに導入でき、Aβo-PrPC複合体に対するmGluR1とmGluR5のシグナルの違いについて検証を進めている。マウス海馬由来初代培養神経細胞についてはDiIを用いた形態観察やカルシウムシグナルの測定プロトコルを確立し、Aβoによるシナプス消失や細胞内シグナルの変化を評価する条件を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、Gタンパク質関連シグナルやFynリン酸化等の細胞内シグナルの解析、受容体1分子レベルでのライブイメージングによる受容体間結合の解析を進める。また近年になりmGluRやGBRの立体構造について構造生物学的手法を用いた革新的な報告が相次いでおり、これらの報告もヒントとして受容体間結合に対する外的な介入方法を確立する。得られた介入方法をHEK細胞株及び海馬初代培養神経細胞に導入し、上述の細胞内シグナルや局在、シナプス毒性に変化があるかどうかを観察して「mGluR1はGBRとの結合を介したGBRシグナル抑制作用によりシナプス毒性に拮抗する」という仮説の実証を目指す。
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Causes of Carryover |
新規に作出したモデル細胞株において細胞内シグナルの測定や受容体局在の観察に困難があり、その条件検討に時間を要したために従来想定した内容の実験が行えなかったことが主な理由である。幸い上記の問題は既に解決しており、本年度に予定していた実験は次年度に十分遂行可能と考える。
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