2022 Fiscal Year Research-status Report
ABCトランスポーターを介したαシヌクレイン細胞外分泌による神経毒性緩和の検討
Project/Area Number |
22K15655
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
中村 善胤 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (30849617)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | α-シヌクレイン / 細胞外分泌 / ABCトランスポーター / 神経活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はABCトランスポーターによるαシヌクレイン細胞外分泌の制御因子を明らかにし、その機構を調節することでプリオン様伝播を抑制できるか解明することを目的として行っている。まず、αシヌクレイン細胞外分泌の大部分を担うとされる神経活動亢進がABCトランスポーターを介しているかどうかマウス大脳皮質初代神経細胞を用いて調べた。グルタミン酸刺激による神経活動亢進、カルシウムイオノフォアによる細胞内Ca濃度上昇はいずれもαシヌクレイン細胞外分泌を促進した。これらの促進効果は、ABCトランスポーター阻害薬であるプロベネシド、グリブライドで抑制された。神経活動亢進は細胞内小胞の分泌を促進するので、αシヌクレインの細胞外分泌を担うABCトランスポーターは細胞膜ではなく、細胞内小胞上に存在すると考えられた。また、MAO-B阻害薬であるセレギリンがSH-SY5Y細胞においてABCトランスポーターを介してαシヌクレインの細胞外分泌を促進することを既に示しているが、初代神経細胞においても同様の結果が得られた。次に、ABCトランスポーター依存性分泌とエクソソーム依存性分泌が相互に関連するか調べた。エクソソーム形成阻害薬であるGW4869による処理で、エクソソーム分画におけるαシヌクレイン分泌が低下することを確認した。非エクソソーム分画に影響は与えなかった。一方、セレギリンは非エクソソーム分画におけるαシヌクレイン分泌を増加させ、エクソソーム分画に影響を与えなかった。これらの結果からは、ABCトランスポーター依存性経路とエクソソーム依存性経路の相互的な機能調節のメカニズムの存在は積極的には示唆されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
神経活動がABCトランスポーターを介してαシヌクレインの細胞外分泌を促進している結果は得られた。また、セレギリンがABCトランスポーターを介してαシヌクレインの細胞外分泌を促進しているというSH-SY5Y細胞の結果も、マウス初代神経細胞で再現することができた。ただ、ABCトランスポーター依存性経路とエクソソーム依存性経路の相互的な機能調節のメカニズムの存在は積極的に示唆されず、αシヌクレインのプリオン様伝播をin vitroで評価する実験も十分には進んでいないため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
αシヌクレインの細胞外分泌を担うABCトランスポーターは細胞内の小胞上に存在することが示されたため、具体的な分子の特定に進む。細胞内小胞上に存在することが確認されているABCトランスポーターのサブファミリーをsiRNAの手法を用いてノックダウンし、αシヌクレインの細胞外分泌に変化があるか調べる。また、マウス初代神経細胞にαシヌクレインのフィブリルを添加しαシヌクレインの凝集体を形成させ、そこにABCトランスポーターを介してαシヌクレインの細胞外分泌を促進する神経活動やセレギリンを加えることでαシヌクレインの凝集体形成が抑制されるか確認する。さらに、細胞外分泌されたαシヌクレインを別の神経細胞に添加し、取り込みや神経毒性の有無を明らかにする。
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Causes of Carryover |
αシヌクレインのプリオン様伝播をin vitroで評価する実験が十分に進まず次年度使用額が生じた。次年度に上記の実験を行うために使用する予定である。
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