2022 Fiscal Year Research-status Report
モルヒネ代謝物モルヒノンに着目したモルヒネ鎮痛耐性メカニズムの解明
Project/Area Number |
22K15657
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
松尾 康平 福岡大学, 薬学部, 助教 (10802499)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | モルヒネ / モルヒノン / 親電子性物質 / 耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの鎮痛目的でモルヒネの使用量が年々増加する一方、反復投与による鎮痛効果の減弱(鎮痛耐性)や、耐性形成に伴う副作用が問題となっている。現時点では、モルヒネの耐性発現機構に多くの未解明の部分があり、耐性発現を抑制する薬剤も存在せず、鎮痛効果を持続させつつ副作用のリスクを軽減する治療が困難である。我々は、耐性発現機構の解明につながる可能性のあるモルヒネ代謝物モルヒノンの同定に成功した。本研究では、モルヒノンの親電子性に焦点を当てμ受容体やセンサータンパク質との結合を通じた生体・細胞応答から耐性形成メカニズムを解明することを目指す。 本年度は、モルヒノン処理細胞の検討を中心に行い、センサータンパク質との複合体形成を起点とした遺伝子発現変動から、モルヒノンによる鎮痛耐性形成や、耐性形成以外のモルヒノンの役割についても解析し、以下の結果を得た。 1.モルヒノンによるKeap1/Nrf2経路の活性化:モルヒノンは、センサータンパク質であるKeap1を親電子修飾し、抗酸化や薬剤耐性に関与する転写因子Nrf2を活性化させ、下流遺伝子の発現を誘導した。 2.モルヒノンによるHSP90/HSF1経路の活性化:モルヒノンは、センサータンパク質であるHSP90を親電子修飾し、抗アポトーシスに関与する転写因子HSF1を活性化させ、下流遺伝子の発現を誘導した。 これらの結果は、モルヒノンによる遺伝子発現制御を裏付けるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度の計画と前後してしまったが、研究計画書に記載されている計画通り、モルヒノンによるセンサータンパク質を介した転写因子の活性化について明らかにすることができた。これは、研究の進捗において重要な成果であり、今後の研究展開において有益な情報を提供するものである。この結果を踏まえ、引き続きモルヒノンの作用機構や鎮痛耐性形成に関わる他の因子についての研究を進めることで、より包括的な理解を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
モルヒノンがμ受容体等のタンパク質と結合する際に生じる影響を解明するため、モルヒノンとμ受容体との結合解析や、モルヒノン複合体の探索等を行う予定である。これにより、モルヒノンがタンパク質との相互作用を通じて生物学的な効果を発揮するメカニズムを解明する糸口となることが期待される。
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