2022 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病性腎症における低血糖誘導ミトコンドリア由来活性酸素種の寄与解析
Project/Area Number |
22K15687
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
梶原 伸宏 熊本大学, 病院, 医員 (80814756)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ミトコンドリア由来活性酸素種 / 低血糖 / 糖尿病性腎症 / 脂肪酸酸化 / 腎糸球体毛細血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らはこれまで高血糖による糖尿病合併症発症仮説として「ミトコンドリア由来活性酸素種 (mtROS) 過剰産生」説を提唱してきたが、低血糖下では脂肪酸の酸化亢進を介してmtROSが発生し、血管内皮障害を誘導することを世界で初めて見出した。引き続いて、低血糖誘導によるmtROSが、糖尿病モデルマウスにおいて糖尿病網膜症の発症・進展に関与することを証明した。本研究では、糸球体由来の血管内皮細胞を用いて、急激な血糖是正や低血糖により誘導されたmtROSが糖尿病腎症の増悪に関与する可能性を検討し、さらに同現象をモデルマウスで実証する。 当該年度では、本研究におけるin vitroの実験として、ヒト腎糸球体毛細血管内皮細胞 (HGMECs) における高グルコース刺激によるmtROS産生を検討した。mtROSは還元型Mitotracker Redを用い共焦点レーザー顕微鏡により観察・検討を行った。また増加したROSがミトコンドリア由来であることの確認のため、adenoviral vectorを用いてミトコンドリア型スーパーオキシドジスムターゼであるMnSODを過剰発現 (Nature 2000) させたヒト腎糸球体毛細血管内皮細胞(HGMECs + MnSOD)を使用した。a) HGMECs; 正常グルコース濃度培養群 (NG群; 5.5 mM)、b) HGMECs; 高グルコース濃度培養群 (HG群; 25 mM) の2群による検討では、HG群はNG群に比してMitotracker Redの蛍光強度増加を認め、HG + MnSOD群ではその蛍光強度増加が抑制されていた。以上の結果から、大血管由来や網膜毛細血管由来の内皮細胞と同様に、高グルコース状態下の腎糸球体毛細血管内皮細胞においてもmtROSが増加することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度では、本研究におけるin vitroの実験として、ヒト腎糸球体毛細血管内皮細胞 (HGMECs) における検討を実施したが、高グルコース刺激による検討のみであり、低グルコース刺激による検討が進捗していないため。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞実験に関しては、研究計画書に基づき検討を進める予定である。一方、動物実験に関しては、糖尿病モデルマウスに対する低血糖刺激実験を施行している段階である。低血糖刺激終了後のマウス腎臓を免疫染色法にて検討することで、酸化ストレスマーカーが上昇すると想定している。
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Causes of Carryover |
本年度は培養細胞ならびに細胞実験の消耗品の購入に助成金を使用した。当該年度使用金額の集計の結果、1,423円の残額が生じたため、翌年度分と合算し、次年度の細胞実験、動物実験のための費用に使用する計画としている。
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