2022 Fiscal Year Research-status Report
変形性膝関節症に対する防已黄耆湯の治療効果に関する基礎的解析
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22K15695
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
奥茂 敬恭 昭和大学, 医学部, 講師 (40845773)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 変形性膝関節症 / 防已黄耆湯 / 疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性膝関節症に対して漢方薬を用いることが予防的治療戦略の一つになるのではないか、という仮説のもと研究を計画し、実施している状況である。2022年度は変形性膝関節症に伴う疼痛がどの程度起きているのか、そして膝関節炎に有効とされる防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)がどの程度有効なのかをin vivoで確認した。 一つ目に、変形性膝関節症に伴う疼痛が増強するメカニズムとして感覚入力をうける脊髄後角ニューロンにおいて細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)のリン酸化が亢進するが、防已黄耆湯はこれらの変化を抑制していた。さらに、ERKのリン酸化阻害薬であるU0126を脊髄内投与すると、同様の変化を示し、U0126の投与と防已黄耆湯の併用ではその効果が増強されなかったことから、防已黄耆湯による鎮痛効果は脊髄後角におけるERKのリン酸化を抑制することによるということがわかった (Kunieda Y, Okumo T, et al., Appled Sci 2021)。 二つ目に、膝関節内における疼痛刺激を受容する組織として、滑膜と軟骨下骨が挙げられる。特に関節軟骨の下層に位置する軟骨下骨では変形性膝関節症の初期に破骨細胞の分化と増殖が亢進するということが知られている。軟骨下骨における破骨細胞増殖は骨吸収の亢進による組織微小環境の酸性化を引き起こし、自由神経終末における活動電位を生じさせることで痛みが増強する。変形性膝関節症モデルラットに対する防已黄耆湯の内服は、軟骨下骨における破骨細胞増殖を抑制し、疼痛に伴う運動機能の低下をも軽減させた (Kimura T, Okumo T, et al., Applied Sci 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は変形性膝関節症モデルラットを用いた疼痛に焦点を絞った実験を行った。同年に計画していた軟骨細胞の単離によるin vitroでの関節炎モデルに対する防已黄耆湯の投与実験は行えていないため、やや遅れている、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は軟骨細胞の単離によるin vitroでの関節炎モデルに対する防已黄耆湯の投与実験も行っていく。さらに、in vivo実験では変形性膝関節症モデルラットに対する下行性疼痛抑制に関わるノルアドレナリン、セロトニン、オピオイドなどに対する各種阻害剤を脊髄内投与し、防已黄耆湯の内服による鎮痛効果が下行性疼痛抑制系を刺激することに関与しているのではないかという仮説を検討していく。
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Causes of Carryover |
2022年度に予定していたin vitroの実験を次年度にも行う方針としたため、培地や試薬等の諸経費を必要とするため、次年度使用額が生じた。具体的には、動物の購入、細胞の単離及び培養のための試薬に10万円、in vitro関節炎モデルを作製するための試薬に30万円、ELISA等の測定機器、試薬に80万円を計上する。
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