2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of ALS pathology caused by disruption of NEK1-mediated cell signaling pathway
Project/Area Number |
22K15702
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 靖章 東北大学, 医学系研究科, 助教 (70897735)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | NEK1 / リン酸化 / ALS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、孤発性を含む筋萎縮性側索硬化症 (ALS) のリスク遺伝子であるNever in mitosis gene A-related Kinase 1 (NEK1) の翻訳産物であるセリン・ スレオニンキナーゼNEK1に着目し、リン酸化の標的となる基質タンパク質を同定した上で、運動ニューロン死というALSの根本的病態に至るカスケードの一旦を解明することを目的としている。 NEK1は機能喪失によりALS病態に関わることが知られているが、申請者の先行研究により、NEK1は機能未知のタンパク質C21ORF2を基質とし、そのリン酸化が運動ニューロンの表現型異常を引き起こすことが示された。これまでに、C21ORF2のほかにも、ALS病態に関わることが予想されるNEK1の基質タンパク質を複数同定できた。ALSの運動ニューロン病理におけるTDP-43の核外移行・凝集体形成などからRNA代謝障害はALSの主要病態と想定されているが、申請者はALSで変異が報告されているRNA結合タンパク質の一つであるMatrin-3がNEK1の基質タンパク質となっていることに着目し、リン酸化がMatrin-3の機能に与える影響の解明を試みてきた。Matrin-3がどのようなmRNA のスプライシングに関わっているかを探るため、CRISPR/Cas9でMATR3のノックアウト細胞およびALS変異をノックインしたSH-SY5Y細胞を作出した。それらの細胞を用いて行なったRNAシークエンスの結果解析、RT-PCRでの確認により、Matrin-3の標的となっているmRNAを複数同定できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Matrin-3のノックアウト、およびALS変異ノックイン細胞の両者で共通の遺伝子のスプライシング変化が生じていることを見出した。その遺伝子はハプロ不全により精神神経症状をきたすことが知られている遺伝子であり、TDP-43の有無によってもスプライシングが変化することが判明しているため、追及すべき標的と考えられた。しかし、NEK1のリン酸化の違いによってMatrin-3のスプライシング制御能が変化するという確固たる証拠は得られていない。他にも、タンパク質のリン酸化がALSの病態に影響を与えうるような基質タンパク質候補が複数同定できているが、リン酸化の有無の違いで表現型を確認できるような実験系の構築は現在まで完了に至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
NEK1によるリン酸化がMatrin-3のスプライシング制御能に与える影響は確認できなかったものの、ネクロトーシスに関わるRIPK1や、ALSで変異が報告され、かつ小胞体関連タンパク質分解に関わるVCPも、これまでにNEK1の基質タンパク質なっていることをPhostagを用いたリン酸化解析によって確認することができた。今後は、これらのタンパク質の機能や安定性がNEK1を介したリン酸化によりどのように変化するかを確認する方針としている。
|
Causes of Carryover |
次年度は、NEK1が基質であるタンパク質をリン酸化することにより、その機能を変化させるかどうかの解析を詳細に行いたい。この点に関しては、例えば、リン酸化がタンパク質の凝集能に与える影響を検出するin vitro実験を行うためのリコンビナントタンパク質の作製等に予算が必要である。また、これまでに得られた知見を患者変異を有するiPS細胞由来運動ニューロン、およびゼブラフィッシュで検証したいと考えており、それらの購入・維持のため、次年度予算を使用したい。
|