2023 Fiscal Year Research-status Report
家族性パーキンソン病PARK17由来iPS細胞を用いたオートファジー障害の解析
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22K15719
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
坊野 恵子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (20753320)
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Project Period (FY) |
2023-01-20 – 2026-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / iPS細胞 / オートファジー / VPS35 / PARK17 / Rab9 |
Outline of Annual Research Achievements |
家族性パーキンソン病PARK17は細胞内輸送を担うレトロマーの構成因子であるVPS35のD620N変異によって発症する。家族性パーキンソン病の原因遺伝子の中でもオートファジーに関連する遺伝子が複数報告されているが、近年、小胞体などの隔離膜を起源とする古典的オートファジーに対し、ゴルジ体を起源とする新規オートファジーの存在が明らかになった。これまでの報告ではVPS35変異細胞のオートファジー障害においては古典的オートファジー活性化では機能改善に至っておらず、本研究ではVPS35変異による新規オートファジー障害に着目している。 Rab9は新規オートファジー開始分子であり、Rab9と細胞内で共局在し共同することが知られるVPS35は新規オートファジーの主要な分子であると考えられる。実際に変異型VPS35存在下ではRab9とリソソームの共局在が低下していた。野生型またはD620N変異を持つVPS35遺伝子を安定発現するATG5ノックアウトマウス線維芽細胞を用いた解析では、疾患群で新規オートファジー由来のオートファゴソーム形成が阻害されていた。エストロゲンが新規オートファジー促進効果を持つという既報告があるが、上記ATG5ノックアウトマウス線維芽細胞の疾患群では、エストロゲン投与によって新規オートファジー障害が改善した。さらに患者由来iPS細胞から分化させたドパミンニューロンにおいてもATG5を抑制し同様の解析を行ったところ、同様にエストロゲン投与により新規オートファジー障害が改善した。疾患群においてはRab9とATG5の両者をノックダウンするとエストロゲンによるオートファジー回復が疎外されることがわかった。これらの結果から、VPS35遺伝子変異により新規オートファジーが抑制され、エストロゲンはRab9依存的に新規オートファジーを促進することが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究から、in vitroでもパーキンソン病モデル神経細胞においてエストロゲンが神経保護作用を有することを確認し、またこれらのエストロゲン作用は古典的オートファジーに関与するATG5の発現抑制には影響されない一方、新規オートファジーに必須のタンパク質であるRab9やWipi3の発現抑制により改善効果が失われることを確認出来た。パーキンソン病モデル細胞において新規オートファジーの関与を示すことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに、新規オートファジーの神経細胞における役割や、疾患群におけるパーキンソン病の原因タンパク質であるα-synucleinの蓄積有無を解析したい。
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Causes of Carryover |
iPS細胞の培養試薬や消耗品費,各種細胞内小器官の免疫染色に使用する試薬・抗体の購入等に使用し,わずかな差額が生じた.引き続き次年度のiPS細胞培養及び免疫染色の消耗品費に使用する予定である.
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