2022 Fiscal Year Research-status Report
タウオパチー細胞モデルを用いた異なるタウ分子種間における細胞間伝播の検討
Project/Area Number |
22K15725
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
石黒 敬信 新潟大学, 医歯学総合病院, 専任助教 (40929634)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | タウオパチー / タウアイソフォーム / タウ細胞外分泌 / 神経細胞興奮 / βアミロイド蛋白 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病(AD)をはじめ、脳内にタウが異常蓄積する疾患をタウオパチーと呼ぶ。タウは神経細胞内の微小管結合蛋白であり、タウ遺伝子MAPTの選択的スプライシングによりヒト脳内では6種類の分子種が存在する。このうち、微小管結合領域の一部をコードするエクソン10の挿入の有無により、4リピート(4R)タウと3リピート(3R)タウに大別される。ADでは3Rタウ及び4Rタウ、進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核変性症では4Rタウ、ピック病では3Rタウなど優位に蓄積するタウ分子種が異なる。このようにタウは複数の分子種があるが、タウオパチーでも疾患によって蓄積する分子種が異なる。 タウオパチーにおいてもADでは神経活動亢進によって産生が増加したβ-アミロイド(Aβ)も共存し病態進展に関与する。これはタウ伝播はより助長される。一方、非ADタウオパチーではタウ伝播がAβ依存していない。この中には進行性核上性麻痺などADよりも症状進行が急速である疾患も存在する。この点から、背景にはタウ分子種による細胞間伝播における挙動の違いを想定した。 本研究では、神経活動やAβに依存したタウ細胞間伝播の分子挙動について、タウ分子種に着目して進めている。神経系培養細胞を用いて①AD病態を仮定したタウの細胞間伝播モデルを構築すること、②タウ分子種間でその分子挙動を明らかにすることを目的とした。 Aβあるいは神経細胞興奮に依存したタウ分泌、タウの細胞内移行を着目したタウ分子種ごとに検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①Aβおよび神経興奮依存性のタウの細胞外分泌、②Aβおよび神経興奮依存性のタウの細胞内移行について段階的に検証していく計画である。 まずは②の以前に①について十分な検証が重要と考えている。Aβ依存性のタウの細胞外分泌についてはすでに作成しているN2a-MAPT 4R1Nを用いてヒトAPPの野生型およびSweden型を一過性に導入した実験により、APP非導入<野生型APP<Sweden型変異APPの順に細胞外タウの分泌が増加することをウエスタンブロッティング解析により確認した。尚、細胞外のAβ増加もこの順に増加していた。さらに、この変化がAβ依存性であることを確認するため、γ-セクレターゼ阻害剤によるAβ産生抑制によりこれが減少することも確認した。 神経細胞興奮に依存したタウの細胞外分泌については、添加薬剤をグルタミン酸としているが、これまでのところこの濃度依存性に細胞外タウの変化は明らかとなっていない。神経細胞興奮の指標としてはEGR-1を設定している。ラット初代培養細胞においてはEGR-1の濃度依存性の変化をとらえられているが、現在用いているN2a細胞においてはグルタミン酸濃度依存性による変化が確認できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
Aβ依存性のタウの細胞外分泌については、Aβ増加条件を当初の計画通り、①Aβ産生に抑制的であるIceland変異型APPのプラスミドDNAを作成し、この導入による検証(野生型APPよりもAβ産生が低下することが予想され、これに依存して細胞外のタウ分泌が低下すると考えられる)、②Aβ過剰産生となるAPP安定N2aとの共培養系による検証をそれぞれ行っていく。 神経細胞興奮に依存したタウの細胞外分泌については、現状のN2a細胞による実験系で進めていく場合は添加薬剤及び細胞興奮の指標となるマーカーの検討が必要である。これが困難であれば、ラット初代培養細胞への遺伝子導入による検証を進めていく必要があると思われる。 まずは現在保有しているN2a-MAPT 4R1Nにより上記の実験系を構築したのち、分子種を変更しその挙動の変化を確認する。
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Causes of Carryover |
初代培養細胞を用いた実験系が想定以上に実施できなかったため
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