2023 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質の制御機構からみたALS/FTDの病態解明
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22K15734
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
七浦 仁紀 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00827909)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 遺伝性神経疾患 / 前頭側頭型認知症 / RNA結合タンパク質 / 液-液相分離 / 相分離シャペロン / 筋萎縮性側索硬化症 / 神経変性疾患 / 精神神経疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭型認知症(FTD)などの神経疾患は、細胞内にタンパク質の凝集体が出現して神経変性が進行し、根本的な治療法はない。近年、ALS/FTD関連遺伝子の研究から、RNA結合タンパク質の細胞内における相分離の異常が、疾患メカニズムに関わることが推測されている。fused in sarcoma(FUS)などのRNA結合タンパク質は、アミノ酸組成が数種類に偏った低複雑性ドメインを持ち、溶液中では定まった高次構造を持たない天然変性状態として存在しているが、局所的な濃度変化などをきっかけに可逆的な液-液相分離(liquid-liquid phase separation: LLPS)液滴を形成する。これにより細胞内の膜を持たないオルガネラの形成や区画化が行われ、細胞内におけるストレス応答や遺伝子発現などの生命活動が維持されているが、相分離の異常が病的なアミロイド様線維形成につながることが示唆されている。また、Karyopherinβ2などの核内輸送受容体が、RNA結合タンパク質の核-細胞質間輸送を担うだけでなく、相分離を制御していることが明らかとなり、ALS/FTDにおける相分離制御因子の役割が注目されている。本研究では、FUSやTDP-43、C9orf72などの代表的なALS/FTD関連遺伝子と、様々な相分離制御因子および破綻要因に着目し、細胞生物学的手法や生化学的手法などを組み合わせた分野横断的解析により、ALS/FTDをはじめとする神経変性疾患の凝集体形成過程を解明し、治療法開発へつなげることを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生化学的手法を用いた評価系により、神経疾患における相分離異常について検討をすすめている。
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Strategy for Future Research Activity |
生化学的手法や生物学的手法を組み合わせた評価系により、前頭側頭型認知症や筋萎縮性側索硬化症を含めた精神神経疾患の病態解析を推進する。
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Causes of Carryover |
予定していた消耗品購入および外注費用が次年度となったため。
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