2023 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症の作業記憶ネットワークにおけるGABA伝達変化のシナプス後部メカニズム
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22K15746
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
坪本 真 金沢大学, 附属病院, 助教 (40835906)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | GABAA receptor / GABARAP / GPHN / ARHGEF9 / SHISA7 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、統合失調症で低下が多く報告されている視覚作業記憶の神経ネットワークを構成する背外側前頭前野(DLPFC)と後部頭頂野(PPC)において、GABA受容体足場タンパク質をコードするGABARAP、GPHN、ARHGEF9、SHISA7の発現を定量した。定量には統合失調症患者と対照者のペア20組からの死後脳を用い、それぞれの死後脳のDLPFCおよびPPCの灰白質から抽出したRNAを用いた。各症例から得られたRNAサンプルを用いてGABARAP、GPHN、ARHGEF9およびSHISA7のmRNAの発現を定量した結果、DLPFCにおいてGABARAPは3.5%増加、GPHNは発現量に変化なし、ARHGEF9は0.7%増加、SHISA7は12.3%増加、PPCにおいてGABARAPは2.8%増加、GPHNは3.9%減少、ARHGEF9は0.4%増加、SHISA7は22.3%増加していることが判明した。疾患、性別を固定効果、年齢、保存期間、皮質サンプルのpH、RNA integrity number(RIN)を共変量とした共分散分析の結果、DLPFCにおける各遺伝子発現への疾患の影響は4つの足場タンパク質すべてで有意性は検出されなかった。PPCにおける各遺伝子発現への疾患の影響はSHISA7のみで有意であった。またDLPFCでの共分散分析における性別、年齢、保存期間、皮質サンプルのpH、RINの有意な影響はGABARAP、ARHGEF9、SHISA7では認められなかった。GPHNでは年齢およびRINによる有意な影響を認めた。PPCでは上記共変量の有意な影響を認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、視覚作業記憶ネットワークを構成する大脳皮質4領域におけるGABRA1、GABRA2、GABRA5、GABRB2、GABRG2、GABRD、GABARAP、 GPHN、ARHGEF9、SHISA7の発現を20組の統合失調症と健常対照者のペアにおいて計測することを目的としている。2023年度には、これらの症例の脳サンプルが存在する米国ピッツバーグ大学精神科に出張して一次視覚野(V1)、二次視覚野(V2)からRNA抽出用のサンプルを準備する予定であったが、日程が合わずできなかった。そのためDLPFCおよびPPCのRNAサンプルを用いてGABA受容体足場タンパク質の発現定量のみを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度にはピッツバーグ大学精神科に出張し、一次視覚野(V1)、二次視覚野(V2)の灰白質のRNA抽出用のサンプルを準備し空輸する。同領域における6種のGABA受容体サブユニットとGABA受容体足場タンパク質をコードする4種の遺伝子の発現を定量し、統計的に解析する。
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Causes of Carryover |
2023年度には、脳サンプルが存在する米国ピッツバーグ大学精神科に出張して一次視覚野(V1)、二次視覚野(V2)の灰白質のRNA抽出用のサンプルを準備し空輸する予定であったが日程が合わず、2024年度に延期した。そのため予定していた渡航費用を使用しなかった。2024年度にはピッツバーグ大学精神科に出張し、一次視覚野(V1)、二次視覚野(V2)の灰白質のRNA抽出用のサンプルを準備し空輸し、RNAの抽出および定量を行う。そのための出張費用と試薬、人件費に使用する。
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