2022 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症心臓病態を反映した心循環系副作用リスク評価系の構築
Project/Area Number |
22K15784
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奥村 啓樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 特任助教 (10893745)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 22q11.2欠失 / 3q29欠失 / iPS細胞 / 統合失調症 / 心疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症は心疾患の合併率が高いことに加え、統合失調症治療薬にもQT時間延長をはじめとする心循環系副作用が多いことも相まって、死因の多くを心臓死が占める。そこで本研究では、統合失調症と心疾患の共通発症リスクである22q11.2欠失症候群患者より樹立した患者iPS細胞から心筋細胞を用い、患者心臓病態を反映した心循環系副作用評価系の構築および患者心臓病態を明らかにすることを目的とした。研究開始初年度である本年度は、(1) 健常者および22q11.2欠失症候群患者iPS細胞からの高純度心筋細胞分化誘導法の確立、(2) 健常者/22q11.2欠失患者iPS細胞由来心筋細胞のトランスクリプトーム解析を実施した。 項目(1)について、従来行っていた画一的な分化誘導法ではiPS細胞株毎での誘導効率に大きな差があり、解析を進める上で問題となっていた。そこで本年度では健常者4例、22q11.2欠失症候群患者3例から樹立したiPS細胞株それぞれについて、心筋分化誘導法の最適化を実施し、すべての細胞株で心筋細胞マーカーである心筋トロポニンT陽性率が90%以上の心筋細胞ストックを得た。また、in-vitro細胞外電位計測用MEA(Micro-Electrode Array; 微小電極アレイ)システムにより拍動する心筋細胞外電位データを取得し、QT間隔延長など心機能毒性評価に利用可能であることを確認している。項目(2)については、 22q11.2欠失症候群患者心臓病態を明らかにするため、分化誘導した心筋細胞のRNA-seq解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り進行しているため、おおむね順調に進んでいると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度に分化誘導法を確立、凍結保存したiPS細胞由来心筋細胞における細胞外電位の測定を進め、心筋伝導系に関与する各イオンチャネル(Na+, K+, Ca2+など)の阻害剤に対する反応性等の表現型を確認する。また、RNA-seq解析により差異が認められた遺伝子について、表現型との関連性を阻害剤や活性化などによるレスキューを行うことで確認する。また、3q29欠失患者iPS細胞からも同様に心筋細胞分化誘導を行い、22q11.2欠失患者と3q29欠失患者心筋細胞に共通して存在する病態について解析を進める。
|
Causes of Carryover |
細胞株毎の心筋細胞分化誘導法の最適化に想定よりも時間がかかり、RNA-seq解析が年度内に終了しないため、次年度使用額が生じた。なお、令和5年度に入りすでにRNA-seq解析は開始しており、研究計画遂行に遅れはない。
|