2023 Fiscal Year Research-status Report
概日リズム指標から同定された「双極性要素」に基づくうつ病治療の層別化の検討
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22K15792
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
坪井 貴嗣 杏林大学, 医学部, 准教授 (00445404)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | うつ病 / 双極性障害 / 躁的因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
うつ病患者の約1/3が現在のスタンダードな治療を行ったとしても難治性うつ病に移行することが報告されている。その理由の一つとして、うつ病患者の中には躁的因子を有するものの、明確な躁病エピソードがない為に操作的診断基準でうつ病と診断され、抗うつ薬を中心とした加療に奏効しない患者が存在することが指摘されている。躁的因子にはうつ病エピソードの若年発症、双極症の家族歴、病前性格としての発揚気質や循環気質、混合性の特徴、非定型の特徴などが挙げられ、実臨床上もこのような躁的因子を有するうつ病患者に対して将来への双極症への移行を想定して適応外使用ではあるが気分安定薬や抗精神病薬で加療し治療がすることをしばしば経験する。本邦のうつ病治療ガイドライン第2版では躁的因子を有するうつ病患者の治療については、双極性うつ病の可能性に配慮する必要があると記載されているのみでその治療法についての記載はない。海外の混合性の特徴を伴ううつ病へのガイドラインではその治療法に関しては抗うつ薬ではなく双極性うつ病に準じた抗精神病薬や気分安定薬等による治療が望ましいと言及されているがエビデンスは十分ではない。 そこで我々は、まず本邦での現状把握のために、双極性うつ病に準ずる治療にて長期安定に至るうつ病患者が存在することを明らかにし、さらにその集団の躁的因子と治療内容との関係性を評価するための横断的な調査を行った。具体的には、主たる薬剤が過去6ヶ月以上変更されていないうつ病患者を長期安定患者と定義し、110名の患者が組み入れられた。抗うつ薬単剤群と抗精神病薬・気分安定薬群の2群に分け、さらに躁的因子を定量化する指標であるBipolarity Index (BI)で評価した。そしてこの2群間における処方薬剤とBIの関係について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
双極性要素の一方である躁的因子についての調査は組み入れが完了し、現在解析を行い近日国際学会で発表予定とともに英語論文執筆にも取り掛かっている。ただ、双極性要素のもう一方である概日リズム指標であるが、難治性うつ病の患者を対象に考えていたためにリクルートが少し遅れている。ただし、解析にたえうる最低症例数は確保されており、こちらも概ね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記進捗状況の理由にも記載したが、躁的因子の調査に関する国際学会発表は応募済であり、現在同時に英語論文執筆を行っており、今年度中に投稿と受理を目指したい。そして概日リズム指標に関しては、難治性うつ病という病態の異質性・多様性だけでなく概日リズムの個人差も大きいと考えられるため優位な所見が得られるかわからないが、引き続き調査を進め、今年度中に何らかの結果公表が行えるよう努めたい。
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Causes of Carryover |
次年度に人件費や国際学会出張のための旅費交通費、また論文投稿のための英文校正費やオープンジャーナルへの掲載料などへの使用が生じたため
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