2022 Fiscal Year Research-status Report
Dual-energy CTを用いた有痛性骨転移に対する新規緩和照射手法の確立
Project/Area Number |
22K15838
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
和田 優貴 秋田大学, 医学系研究科, 講師 (20748280)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 骨転移 / dual-energy CT / 緩和放射線治療 / 緩和照射 / Radiomics |
Outline of Annual Research Achievements |
有痛性骨転移に対する緩和的放射線治療の有効性と安全性は多くの研究報告で示されているが、課題として、①照射を行っても2-3割の患者では期待した疼痛緩和を得られない、②疼痛が強い場合はMRI/FDG-PET検査など病巣の検出感度に優れるが検査時間が長い精査を施行できずに照射範囲の設定に難渋する、③照射導入時期の指標として自覚症状以外の客観的な基準が定まっていないことがある。Dual-energy CT(以下、DECT)は2種類の異なる電圧でCT撮影を行うことで、吸収値の違いから物質密度や実効元素を推定可能な撮影技術であり、骨内のカルシウム(Ca)やハイドロキシアパタイト(HAP)の物質密度を非侵襲的に推定することが可能である。本研究では、骨転移に対する緩和的放射線治療にDECT技術を応用することで、CT画像での骨転移範囲の高精度な識別、効果予測因子の解明、および、画像所見に基づく照射導入時期の客観的指標の確立を目的としている。 2022年度は「骨転移範囲の高精度な識別」に関しての研究を行った。当院で放射線治療を施行した骨転移患者(脊椎転移)において、DECT画像、通常のCT画像、MRI画像とを比較解析することで、骨転移病巣の検出能や拡がり診断の精度を検証した。脊椎転移においてDECT画像は通常のCT画像よりも骨転移の浸潤範囲の検出感度が高いことを明らかにして、学会発表を行った。また、preliminaryな解析ではあるが、現在の骨転移画像診断のゴールデンスタンダードであるMRI画像と同等の骨病変の検出感度がある可能性を明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DECTで撮影された画像を解析するためには画像処理アプリケーションで最適な条件に前処理する必要がある。本研究では骨内のCa/HAPに焦点を当てた前処理が必要であるが、この前段階の画像処理(物質弁別画像の生成)の条件構築、および、画像処理に時間を要した。このため、予定では脊椎転移・非脊椎転移の両方で、通常のCT画像とMRI画像との比較を予定していたが、実際には脊椎転移症例での通常CT画像との比較解析を行うに留まった。
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Strategy for Future Research Activity |
前項の通り、2022年度はDECT画像の前処理に想定以上の時間を要した。しかし、本研究でおこなう画像処理の条件設定は完了しており、また、画像処理に優れたGPU搭載パソコンを購入することで処理時間の短縮が可能となったため、2023年度には脊椎転移症例におけるMRI画像との比較、および、非脊椎転移症例における通常CT画像とMRI画像との比較解析を早急に行い、もともと予定していた効果予測因子の検討に移行する予定である。具体的には、骨転移病巣のCa/HAP密度と症状緩和率の関連を解析する。症状緩和率にはCa/HAPの密度値のみではなく、低密度領域の広さや骨皮質との位置関係等の複数の指標が影響すると予想されるため、Radiomicsの手法を用いた機械学習による網羅的な評価を予定している。 2024年度には照射導入時期の客観的指標の確立に取り組む。骨転移に対する照射導入時期の指標として、疼痛等の自覚症状以外に確立した客観的指標は明らかとなっていない。骨破壊が進むほど除痛効果は得られにくいと予想されるが、早期に照射しすぎても、照射による脆弱性骨折等の晩期有害事象や、薬物療法等の癌治療への影響も懸念される。このため、骨転移症例における適切な照射導入時期の指標の確立が求められる。緩和照射前に複数回のDECT画像が撮影された症例で、骨転移部のCa/HAP 密度の経時的変化、および、自覚症状との相関を解析する。また、2023年度に実施予定である骨転移部のCa/HAP 密度と症状緩和率との関連もふまえ、骨転移部のCa/HAP密度を用いて緩和照射導入時期の再現性・普遍性のある客観的指標を確立する。
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Causes of Carryover |
DECT画像の前処理の条件設定、画像解析ソフトでの画像処理、および、画像評価方法の設定に想定以上の時間を要したため、2022年度に予定していた骨転移病巣の検出感度の評価は、脊椎転移の患者での通常CT画像との比較に留まるに至った。このため、当初予定していた成果発表のための予算や、画像データを保存するための外付けSSDなど備品のための予算に未使用額が発生し、次年度への繰り越しが生じた。2022年度に画像前処理の条件設定は完了しており、また、画像処理のためにGPU搭載のパソコンを購入したため画像処理時間が短縮できており、2023年度には2022年度に実施予定であった脊椎転移におけるMRI画像との比較、非脊椎転移における通常CT画像やMRI画像との比較検討を早急に行い、効果予測因子の解析に移行する予定である。次年度使用額はこれらの研究遂行に必要な消耗品、および、学会での成果発表に充当する計画である。
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