2023 Fiscal Year Research-status Report
放射線治療による好中球細胞外トラップを介した遠隔転移のメカニズム解明と予防法開発
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22K15864
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中島 良太 京都大学, 医学研究科, 助教 (90802778)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 好中球細胞外トラップス / NETs / 遠隔転移 / 放射線治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、刺激を受けた好中球が自身のクロマチン構造である好中球細胞外トラップス(Neutrophil extracellular traps; NETs)を放出するという現象が、がん患者においても起こっていて、がんの遠隔転移を促進させていることが分かってきた。本研究では、がんに対する三大治療の1つである放射線治療が肺などの臓器にNETsを引き起こすことで、がんの遠隔転移を促進させている可能性を検討する。また、そのメカニズムを解明することで、がん遠隔転移を予防する方法を確立することを目標としている。 申請者は、マウスへの放射線照射によって肺内にNETsが生じることを見いだした。しかしながら、マウス肺の抽出液中のNETsをdsDNA抗体による免疫沈降法で回収し、サンプル内のシトルリン化ヒストンH3(NETs特異的マーカー)をウェスタンブロットで定量したところ、放射線照射によって生じたマウス肺内NETsの線量依存性は明らかではなかった。 一方で、NETs形成を抑制する新規薬剤が発見することができ、in vitroにおいて、ヒト好中球のNETs抑制効果を認めた。現在、in vivoにおいて、この薬剤がマウスの肺転移を抑制するかどうかを確かめるための実験条件の最適化を行っている。 さらに、NETsが遠隔転移を引き越すメカニズムを検討するために、NETsと共におこる様々なサイトカインの定量を行ったところ、複数の炎症を誘導する因子が同定できた。今後は、これらの因子と遠隔転移の関係についても検討を行う予定としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
放射線治療によるNETs形成については、起こることが確認されているものの、線量依存性がはっきりせず、放射線照射によって惹起された炎症によるものと考えられる。このため、研究の主目的をNETsを標的とした遠隔転移予防法にシフトする必要があったため。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroにおいて、NETsの抑制効果のある薬剤を発見したことにより、in vivoにおける本薬剤の遠隔転移抑制効果を確認する予定としている。 また、NETs形成と共に放出されるサイトカイン群についても、それらのサイトカインがマウスの体内でどのような現象が引き起こすのか、またがん細胞に対してどのような影響を与えるのかについて検討を加える予定としている。
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Causes of Carryover |
プロジェクトの重点を遠隔転移の予防法確立にシフトした影響もあり、多少の遅れが生じている。それに伴い、次年度使用額が生じているが、次年度において、新規に発見した薬剤の遠隔転移抑制効果をマウスモデルを用いて検討する実験に使用する予定である。
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