2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K15889
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
森 康晶 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, QST病院 治療診断部, 医師 (80931310)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 重粒子線治療 / 粒子線 / 放射線治療 / 腫瘍微小環境 / 免疫関連分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本人の主要な死因は癌である。現在行われているがんの治療は、主に①手術療法、②放射線療法、③化学療法(抗がん剤)、④免疫療法の4つがある。中でも免疫治療の発展は目覚ましいものがある。しかしながら、我々が期待する治療効果には達していないというのが現状であり、更なる治療法の開発が望まれる。 重粒子線治療はその殺細胞効果の高さからX線に対して抵抗性の悪性腫瘍に対する適応拡大が期待されている。日本では前立腺癌や切除不能な骨軟部腫瘍などに加えて、2022年4月から切除不能肝細胞癌、切除不能局所進行性膵癌、切除不能子宮頸部腺癌に対して保険収載された。重粒子線治療と化学療法や免疫療法を併用することにより、これまで困難だった癌治療の飛躍的な治療効果向上が見込まれている。 複数の第III相臨床試験においては、免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体の高い有効性が明らかとなっている。我々は子宮頸癌の臨床検体における放射線治療・炭素イオン線治療中のPD-L1発現がすでに亢進していることを報告した。しかしながら、放射線照射による腫瘍細胞の免疫関連分子発現はがんの種類や細胞環境などによって異なることが知られており、その他のがん種でどのような発現変化を示すかを明らかにする必要がある。そこで本研究ではPD-L1のように抗腫瘍免疫を調節する免疫関連分子が、細胞実験レベルでの炭素イオン線照射で発現が亢進・抑制されるか否かを検討する。本研究の成果は、炭素イオン線治療と免疫治療併用の相乗的抗腫瘍効果のメカニズムを明らかにし、効果的ながん治療を確立するための分子生物学的基盤になると期待される。 癌治療薬のターゲットとなりうる臨床的に意義のある免疫関連分子の選定とその解析方法を論文検索などを行い検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抗腫瘍効果に関わる免疫関連分子はいくつか報告があるものの臨床的に意義のある分子として研究対象とするのに適しているものの選定・検討に時間がかかった。 また、コロナ禍で生物実験を予定通り遂行することが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
骨肉腫の細胞株であるU2OS細胞、子宮頸部腺癌の細胞株であるHeLa細胞などを培養し、様々な線量で炭素イオン線照射、X線照射を行い、コロニーアッセイ法を用いて、細胞生存率を比較する。 上記で求めた細胞生存率からD10(10%の細胞が生存する線量)を用いて、炭素イオン線照射、X線照射を行い、real-time PCRによるmRNAの定量・フローサイトメトリー・ウェスタンブロット・免疫染色などで免疫関連分子の発現を検討する。
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