2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the activation mechanism of brown adipocytes by the non-hematopoietic effect of erythropoietin
Project/Area Number |
22K15949
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
宮垣 知史 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30909495)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エリスロポエチン / 褐色脂肪細胞 / 分化誘導 / 機能活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
不死化前駆褐色脂肪細胞に対する分化誘導開始日をday0とし、day0からエリスロポエチン(以下EPO)および比較対象としてCL316,243(選択的β3アドレナリン受容体アゴニスト、以下CL)を継続投与した。day4,6,8の各段階におけるOil Red O染色で、Control群に比してCL群では脂肪滴が増加(褐色脂肪細胞への分化促進)していたのに対し、EPO群では濃度依存性に脂肪滴形成が減弱していた。day8蛋白サンプルを用いたWestern blottingでは、褐色脂肪マーカーのPRDM16やPGC1-α、脂肪滴形成マーカーのperilipin発現量がEPO濃度依存性に低下していた。さらに、day2のmRNAサンプルでは、褐色脂肪マーカーのPPARγ,Cidea,Elovl3,CEBPα発現量がEPO濃度依存性に低下していた。このことから、前駆細胞の分化過程においてEPOは褐色脂肪細胞の成熟を抑制する作用を持つことが示唆された。 次に、分化誘導のみ施した細胞にday6からEPOやCLを投与して検討した。day8のOil Red O染色では、Control群に比してCL群では脂肪滴がさらに増加したのに対して、EPO群では濃度依存性に脂肪滴の増加が抑制された。day8のmRNA発現量の比較では、UCP1,PRDM16,PGC1-α,Cidea,Elovl3,FGF21がEPO濃度依存性に増加していた。このことから、成熟が進んだ段階ではEPOは褐色脂肪細胞を活性化し、脂肪滴をエネルギーとして消費する可能性が示唆された。 EPO投与による下流の蛋白リン酸化の時間的変化を評価した。分化誘導day2の細胞にEPOを投与すると、投与後15-30分にEPO受容体のリン酸化がピークを迎え、並行してSTAT3のリン酸化が確認された。加えて、同時期からErk1/2のリン酸化が増加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者は、現在研究施設のある大学病院から離れた場所の病院で常勤医として臨床業務に携わっており、研究活動は週1回の研究日および日常の病院業務時間外に大学病院に通って行っているという状況である。そのため、当初の予定よりやや遅れる一因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの実験で得られた結果は有意義な物であり、これを元にして今後の研究の推進方策を考えている。 これまで得られたデータを補完するような詳細なシグナル伝達について、これまで同様の研究手法により検証を深める。さらに、不死化前駆褐色脂肪細胞にEPOを投与した場合に見られる一連の変化がEPO受容体を介した直接的な効果であるかどうかを検証するため、EPO受容体をRNA silencing手技によりknockdownした前駆褐色脂肪細胞を作成し、EPO投与後のシグナル伝達の変化についてwild typeと比較検討する。 また、in vivoの実験系においても、高脂肪食による食餌誘発性肥満モデルマウスに対してEPOを投与してin vitroと同様の結果が得られるか様々な視点で詳細な検討を行う。加えて、褐色脂肪組織特異的にEPO受容体をknockoutさせたマウスを用いて、wild typeとの比較検討を行うことも考えている。
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Causes of Carryover |
医師としての日常臨床業務と並行して研究活動を進めており、当初の予定よりも研究活動の進行に遅れが生じたため、物品消費が予定より少なかった。未使用分に関しては次年度分として繰り越し、さらなる研究活動に使用させていただきたい。今後の方針として、knock down細胞や組織特異的knock outマウスといった新たなコンストラクトの作成/準備も検討しているため、当初の年次使用額よりも必要額が大きくなる可能性があると考えている。
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