2023 Fiscal Year Research-status Report
膵癌の術後早期転移再発予測をめざした転移前土壌形成に関わる細胞外小胞の単離解析
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22K15958
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石垣 和祥 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (60836287)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 膵がん |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌治療において術前化学療法が予後改善に寄与していることは臨床的に明らかであるが、一部の症例では術後早期に転移再発する。このような症例に対しては、切除は身体的負担になるばかりか、限られた予後の生活の質を落とす要因にもなる。もし『術前化学療法後・切除前』に『術後』の早期転移再発が予測できれば、不要な外科的切除を回避でき、その恩恵は患者側にも医療者側にも大きい。本研究は、『術前化学療法後・切除前』に、『術後の予後』を推定するマーカーを、血中の細胞外小胞に着目して探索する。具体的に、第一には、「術前化学療法前後における血中の細胞外小胞内の変異kRas頻度の変化」と「術後の予後」の相関の有無を検証する。第二には、細胞外小胞の特異的サブセットが「pre-metastatic niche」の形成に関与するという「seed and soil 仮説」に立脚して、膵癌由来の細胞外小胞サブセットの中から転移巣形成に関わるサブセットを探索し、その定量を『術前化学療法前後』で行い『術後の予後』との相関を検討する。 本年度は、前年度に引き続き、切除可能病変または切除可能境界病変を持つ膵癌患者のNAC前の血清とNAC後術前の血清をから、サイズ除去クロマトグラフィー法で血中の細胞外小胞を一括で収集したのちRNAを抽出し逆転写後、野生型kRasと変異型kRasの存在比をdigital PCRでの定量を試み、今後の多数検体での解析の基盤を樹立した。さらに、新規症例30例に対して前向きにvalidation を行いつつあるが、本年度の問題点として、digital PCRでの閾値をどこに設定するべきかが不明確な点が挙げられた。そこで、引き続き test case を増やして 適当な閾値を設定することを 当面の目標としつつ、当初の目的を確立していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に進めた切除可能病変または切除可能境界病変を持つ膵癌患者のNAC前の血清とNAC後術前の血清をからの血中の細胞外小胞を一括での収集はクリアーできている。RNAを抽出し逆転写後、野生型kRasと変異型kRasの存在比をdigital PCRで定量できているが、適切な閾値の設定に難渋している。それでも、今年度予定していたことは概ね達成できたと考え 、概ね順調に推移している、と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度までの研究成果を背景にして、『NAC後・術後』の段階での上記細胞外小胞内の変異kRas RNAの頻度も同様に求める。『術後』にはなるが、手術によって原発巣は切除されているため、そこで得られる変異kRas RNAの頻度の多寡は残存癌細胞の多寡に一定の相関があることが予想され、その後の予後を反映している可能性がある。理想的にはNAC後術前に早期再発をきたす可能性の高い症例を手術から回避させることが目的ではあるが、既に収集済み患者血清の『NAC前・術前』および『NAC後・術前』のポイントでの細胞外小胞を回収し、この方法を用いて癌細胞特異的な転移前niche形成に関わる細胞外小胞の量の多寡を定量し、その量的変化と術後の早期転移再発との相関も検証する。 本年度問題になった 変異型kRasの検出を決定するdigital PCRでの閾値について、さらに症例を重ねて確実なものとし、これらの検討をとおして、当初の目的である『NAC後・術前』に「術後の早期転移再発」を予測し不必要な手術を除外する方法として確立する。
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