2023 Fiscal Year Research-status Report
膵癌における間質線維化に関わるRON受容体の治療標的としての可能性の追求
Project/Area Number |
22K15973
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
加藤 晃久 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (10803489)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 膵癌 / RON受容体 / HIF1α |
Outline of Annual Research Achievements |
近年様々な癌腫においては分子標的治療の発展が見られるが,膵癌においては限定的であり新たな分子標的の解明が強く求められている.そのような中で細胞膜上受容体の一つであるRONは,膵癌組織に多く発現し,パブリックデータ(TCGA)の膵癌症例に絞った解析ではRON高発現と予後不良との関係性が認められている.しかし膵癌におけるRONの役割や制御メカニズムには不明な点が多い.そこで本研究では,膵癌組織の特徴でもある間質線維化や乏血性の低酸素環境に着目し,膵癌におけるRONの役割や,線維化・低酸素などに関連する分子の調節機構に焦点をしぼり解析することを目的とした. まず昨年度に解明した内容として,低酸素誘導因子(HIF-1α)とRONは高確率で共発現していることを見出し,siRNA, shRNAを用いた実験ではRONがHIF-1αを制御し得る可能性が示された.今年度はRONがHIF-1αを制御するメカニズムを中心に解明することとした.まず現象の確認として,浸潤能解析により,RON受容体のリガンドであるMSP投与での癌細胞の浸潤能増加とRONノックダウンによる浸潤能低下,およびFull-length RONの強制発現による浸潤能増加が明らかとなった.ウエスタンブロットやPCR,ルシフェラーゼレポーターアッセイを用いてメカニズムの解明を行った結果,HIF-1αのmRNA低下がみられ転写制御に関わっていることが判明したほか,RONがHIF-1αを制御する中心の経路としてPI3K-AKT経路が考えられ,更にSp1を介在し制御に関わっている可能性が示唆された.さらにRONインヒビターであるLCRF-0004投与により浸潤能の低下やHIF-1αの発現低下が示され,RONは浸潤能に関して重要な因子であることが示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RONとHIF-1αの関係性を解明するための様々な現象の結果と,シグナル伝達を中心としたメカニズム解明の実験が順調に進めることが出来たと考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
動物モデルを用いたRONとHIF-1αの関連の実証を中心に進めていく.
|
Causes of Carryover |
実験計画としては概ね良好なペースで進んできており、研究用資材も当初計画していた通りに購入可能な状態であり、抗体など割引対象となった余剰金を次年度へ回す形となった。
|